ナースのお悩み処方箋【5】患者さんが何も言ってくれません

「訴えを傾聴するのも大事な看護。 でも、聴かないのも大事な看護」

看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | ナースのお悩み処方箋【5】患者さんが何も言ってくれません……。

看護学校では『患者さんの訴えを聴きなさい』、『看護の一歩は傾聴から』などなど、傾聴することがいかに大事か、みなさん、それこそにタコができるほど教えられてきたと思います。


――しかし。
イレギュラーなことが起こるのが現場です。

何か言いたげな患者さん……だけど、何も言ってくれない。
傾聴しようにも、何も言わないのだから、何も聴くことができない。

そんな風に悩むのは、看護師なら誰でも通ってきた道です。
悩むだけ無駄!
……と、ベテラン勢は言うでしょうけれど、それだとわざわざコラムにする意味がないので、傾聴の難しさに悩んでいる人に向けてのアドバイスだと思ってください。

そういう時は、相手がしゃべりたくなるまで『待つ!』のが吉。

待っている間、何もしなくてもいいし、一方的に雑談でもしゃべっていればいいのです。
もし相手に言いたいことがあるのなら、タイミングさえ合えば、何か話してくれるはずです。
そう、要はタイミングの問題、なんですね。

もちろん、傾聴することは大事な看護のひとつです。
でも、だからって、訴えを聴き出そうとするなんて、もってのほか!!なんです。
いっそのこと、傾聴しないことも看護だと開き直って、みましょう。

患者さんは、話したくなった時に話してくれます。
既に何か言いたげな様子をしているのなら、あとはタイミングが合うのを待つだけ。

で、あなたはただそこにいて、『いつでも話を聞ける状態』にしておけば、いいんです。

仕事の合間に、ちょこっとだけ顔を覗かせるとか。
配膳の時に「美味しそう」、下膳の時には「美味しかった?」とちょっとした声かけをするとか。
むしろ、何も言わずに、ニコッと笑うだけでもいいでしょう。

がっつり話を聞きますよ!という姿勢じゃ、患者さんの気分によっては、話しかけづらい時もあるというものです。
何となく心にあるモヤモヤしたものを口にしてみたいけれど、わざわざ手を止めてまで聞いてもらうのは申し訳ないかな……って思ってる患者さんだっているんです。
そんな患者さんには、「話、聞きますよ!」という姿勢よりも、さっきから何となく目に入るなと思ってもらうくらいが丁度いいんです。

北風と太陽みたいなものですね。

『何かをする』、それだけが看護じゃないんですよ。
もっと気楽に構えるだけで、意外とスムーズに進むこともあるものなのです。 

 

 


 【岡田久美】 兵庫県出身。看護書籍の編集とゲームシナリオライターを本業に、フリーの看護師として活躍中。いつでもどこでもどんなところでも勤務できるオールマイティな看護師を目指し、これまでの勤務職場は病院、クリニックなど30以上。

著書に「看護師の流した涙」(ぶんか社)がある。

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