二交代勤務で看護師の離職が増える―ヨーロッパ12カ国の調査で明らかに

日本でも最近は二交代勤務が増えてきました。そんな中、二交代で働く看護師はバーンアウト(燃え尽き症候群)や離職のリスクが高いというヨーロッパの調査結果がBMJ-Open(8月23日)に発表されました。

 

 

長時間労働は看護師の満足度にどう影響する?

ヨーロッパの一部の国では、看護師不足の対策などのために多くの病院で二交代勤務を採り入れるようになっています。しかし二交代勤務は1シフトの労働時間が長時間になるため、看護師の健康や仕事の満足度に及ぼす影響が心配されています。

 

そこで、英・サウサンプトン大学のキアラ・ダルオーラ研究員らは長時間労働を伴う二交代勤務と看護師のバーンアウト・離職率の関係を調査しました。

 

この調査は、2009~2010年にイギリス、アイルランド、フィンランド、スペイン、スイス、ベルギー、オランダなど、ヨーロッパ12カ国で行われた看護労働調査のデータを基に2次分析したものです。対象は、これらの国の488病院の内科・外科病棟に働く正看護師3万1,000人余りです。ICUや長期療養病棟の看護師は除外されました。看護師の平均年齢は38歳です。

 

ポーランドでは99%が「1シフト12時間以上労働」

3万1,000人余りの看護師全体を対象として質問紙調査で「1シフトの労働時間」を聞いたところ、以下の結果になりました。

 

●1シフトの労働時間

8時間未満 50%
8~10時間 31%
10~12時間 4%
12~13時間 14%
13時間以上 1%

 

国別でみると、

1シフト12時間以上の二交代勤務で働く看護師の割合が多い国は、

ポーランド(99%)

アイルランド(79%)

イギリス(36%)

でした。

 

二交代看護師の3分の1が「仕事を辞めたい」

1シフト12時間以上の二交代勤務の看護師では、1割から3割の人にバーンアウトの症状がみられ、4人に1人は仕事に不満を持っていました。勤務スケジュールの柔軟性が低いことに不満を持つ看護師は4人に1人で、看護師の3分の1が仕事を辞めたいと答えました。

 

以上から、論文は「二交代勤務は看護師にバーンアウトなどの有害な影響をもたらし、看護師だけでなく患者にとっても安全性の面で問題が出る恐れがある」と結論づけています。

 

二交代勤務のメリットも指摘

今回の分析では、二交代勤務は看護師に悪影響を与えることが示されました。とはいえ、二交代勤務を好む看護師もいることは確かです。

論文は、以下のような二交代勤務のメリットを挙げています。

 

看護管理者・経営側にとっては:

・シフト交代が少なくなるので、引き継ぎ・申し送りの回数が減少→効率性・労働生産性の向上

看護師にとっては:

・労働時間がまとまるので、出勤日数が減少→休日の増加

・通勤コストの減少

・仕事とプライベートを両立させやすい

 

適切な休憩を

共同研究者で同大学のピーター・グリフィス教授は、英国では多くの看護師が二交代勤務を好んでいることから、二交代勤務看護師の仕事満足度が低いことに驚いています。
そのうえで、二交代勤務の弊害に注意するとともに、勤務中や勤務間には必ず適切な休憩を取ることを勧めています。

 


【筆者】中岡ひさ子

看護師。徳島大学卒業後、13年間看護師として勤務。その後海外論文の翻訳に携わり、医学・看護論文の翻訳者、ライターとして活動中。

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