「夜勤は72時間までルール」が変わるかも?病院と看護協会の攻防はじまる

1か月の夜勤時間を72時間までとする「72時間ルール」を巡って、看護協会と病院団体との攻防が激しくなっています。次回の診療報酬改定にむけて、病院団体が「72時間ルール」の見直しを要望、これに対して日看協は「72時間ルール」堅持の宣言を採択しました。

 

 

そもそも「72時間ルール」ってなに?

そもそも「72時間ルール」とはいったい何なのでしょうか。

 

「72時間ルール」とは、「看護職員の月平均夜勤時間を72時間以内」にするという入院基本料の要件の1つです。2006年度の診療報酬改定で、患者7人に対して看護師1人を配置する「7対1」の看護体制を新設するのに伴って設けられました。

病院は「72時間ルール」を守らないと、診療報酬(病院の収入)を減算されてしまうという厳しい内容です。「7対1」の看護体制を取る病院だけでなく、「10対1」や「13対1」、「15対1」の病院も対象になります。

 

守らなければ病院収入のマイナスも

「72時間ルール」を守るためには、2交代勤務の場合は夜勤回数が月平均4回程度、3交代で9回程度におさめる必要があります。

 

もともと看護師の働く環境を改善しようという目的で導入されたこのルール。看護側の強い要望もあり、診療報酬上で実現されましたが、病院側からするとうっかりルールを破ると収入のマイナスにもつながってしまうため、導入に当たっては強い反対もありました。

 

12の病院団体からなる日病協が見直しを要望

今回、「72時間ルール」の導入から10年がたったことで、改めて今後のあり方を見直してほしいと、病院団体が厚生労働省に要望書を提出しました。要望したのは日本病院会や全日本病院協会など、12の病院団体から構成される日本病院団体協議会(日病協)です。

 

要望は次回の診療報酬改定(2018年度改定)に向けて、10項目の要望をまとめた要望書の中の1項目として出されました。

 

地方病院の看護師確保が厳しい VS 看護師の労働環境の生命線

日病協はルールについて、「撤廃を求めるのではなく、夜勤の要件に幅を持たせたい。そのためにアイディアを出し合い、妥協点を探りたい」としています。また、現状のルールが「労働基準法よりも厳しい内容」とし、そのために地方の病院で看護師確保がより厳しい状況になっていると訴えます。

 

こうした動きを受けて、日本看護協会はすぐに対応しました。9月1日には「日本看護サミット」を開き、「72時間ルールは看護師にとっての生命線。堅持するべき」という内容の宣言を採択しています。

 

日看協「ルール撤廃は負のスパイラル起こす」

日看協では「ルールを撤廃すると、夜勤が増えることから離職者が増え、負のスパイラルに陥る。看護師不足は短時間の正規雇用など、働きかたに幅を持たせることで、経験豊かな看護師を現場に戻すことで解決すべき」としています。

 

次回、2016年度(平成28年度)の診療報酬改定は、年末から年明けに向けて、議論の大詰めを迎えます。「72時間ルール」も含めた議論の行方に注目が集まっています。

 

 

診療報酬における看護職員の月平均夜勤時間72時間要件について日本看護協会)※PDF

厚生労働省に対する要望書(日本病院団体協議会)※PDF

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