アメリカの子どもの過半数が軽度の脱水状態―学習能力の低下も?

アメリカの10代以下の子どもたちの過半数は水分摂取が十分でなく、軽度の脱水状態にある―。

こんな驚くべき結果がAmerican Journal of Public Healthに発表されました。ハーバードT.Hチャン公衆衛生大学院のエリカ・ケニー氏らによる全米調査で明らかになったものです。

 

ケニー氏らは当初、学校での加糖飲料の消費状況について調査し、加糖飲料よりもはるかに健康的な飲料である水を子どもたちに飲ませる方法を探ろうとしていました。ところが、子どもたちは、水もさることながら、水分そのものを十分に摂っていなかったのです。そこで、子どもたちの水分摂取状態を調査することにしました。

 

ここでの「水」とは、水道水やミネラルウォーターなど、何も加えていない透明の普通の水を指します。「水分」は「水」に加えて、ジュースや清涼飲料、ミルク、スープ、お茶、コーヒー、野菜や果物など、口から摂取するすべての液体を指します。

 

アメリカの10代以下の子どもたちの過半数は水分摂取が十分でなく、軽度の脱水状態にある

 

子どもの4分の1はまったく水を飲まない

対象は、2009~12年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した6~19歳の子ども4000人余りです。この子どもたちのデータから尿浸透圧を計算し、尿浸透圧の値から水分摂取状態を推定しました。

 

その結果、軽度の脱水状態であると判定された子どもは半数を超えていました

また、水道水やミネラルウォーターなどの「水」を全然飲まないと答えた子どもは4分の1にのぼっていました。男児は女児よりも水分を十分に摂っていない割合が76%高いこともわかりました。

 

米国医学研究所(The Institute of Medicine;IOM)によれば、子どもやティーンエイジャーは、年齢・身長体重・性別に応じて1日1.7~3.3リットル(2~3quart)の水分を摂る必要があるといいます。

 

軽度の脱水でも身体・学習能力が低下する

筆頭研究者のケニー氏は、これほど多くの子どもたちが十分に水分を摂っていないことに驚きを示しています。

そのうえで、「子どもたちの脱水はきわめて軽い状態。ただちに健康への脅威となるものではない」としながらも、「軽度の脱水でも、頭痛や易刺激性を引き起こし、身体能力や学習能力の低下につながる可能性がある」と警告しています。

 

学校での取り組みで子どもの脱水予防

子どもの脱水は、1日を通して子どもにもっと水分を飲ませれば簡単に解決する問題です。しかしケニー氏は、それほど簡単ではないと指摘しています。とくに都市部では鉛汚染への懸念などから、水道水を子どもたちに飲ませたくない学校が多いそうです。

 

ミネラルウォーターをサーバーから提供する学校もあります。ただし、これは費用が高く、維持管理に時間がかかります。

カロリーの高い加糖飲料の消費を減らすためにカフェテリアに自動給水機を置いている学校もあります。

 

ケニー氏は、水をもっと飲みやすくする学校の取り組みが、子どもたちの脱水の予防に役立つと述べています。

 

【Sources】

Inadequate hydration can lead to impaired cognitive, emotional function

Got Water? Most Kids, Teens Don't Drink Enough

 

 


【筆者】中岡ひさ子

看護師。徳島大学卒業後、13年間看護師として勤務。その後海外論文の翻訳に携わり、医学・看護論文の翻訳者、ライターとして活動中。

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