最終更新日 2018/02/06

分子生物学的完全寛解

分子生物学的完全寛解とは・・・

分子生物学的完全寛解(ぶんしせいぶつがくてきかんぜんかんかい)は、急性骨髄性白血病急性リンパ性白血病の治療効果を表すもので、最も高い治療の効果が得られている状態である。

 

急性前骨髄球性白血病(APL;acute promyelocytic leukemia)やフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)などの造血器腫瘍は特徴的な遺伝子異常を有していることが知られている。例えばAPLでは15番染色体と17番染色体の一部が入れ替わること(染色体転座)によって生じるPML-RARAや、Ph+ALLでは9番染色体と22染色体の転座によって生じるBCR-ABL1が特徴的である。そのような遺伝子異常をリアルタイムPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)と呼ばれるDNAを増幅させて遺伝子異常の程度を数値化する手技を行うことで検出できる。

 

分子生物学的完全寛解を達成するには、遺伝子異常がリアルタイムPCR法で検出されないことが必要になる。つまり、治療を行い、治療効果判定の骨髄検査で白血病細胞が5%未満となり、正常な造血が回復した状態を血液学的完全寛解とよび、さらにリアルタイムPCR法で遺伝子異常が検出されなければ、より深い寛解である分子生物学完全寛解と判断できる。

執筆: 河村俊邦

防衛医科大学校病院 血液内科

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