心臓のしくみとはたらき
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は心臓のしくみとはたらきについて解説します。
中嶋ひとみ
新東京病院看護部
〈目次〉
心臓の位置とみため
心臓は、握りこぶし大の臓器で、重さは250~300gです。
心耳(しんじ) は心房の一部をなす耳殻状の部分で、左心房に左心耳、右心房に右心耳があり、それぞれ肺動脈・大静脈の基部を両側から包む形となっています(図1)。
心臓は第2~5肋間の高さで、縦隔(じゅうかく)の大半を占めています(図2)。
心基部は第2肋間の高さ、心臓の上端後部で肺動脈と大動脈が出る場所です。
心尖(しんせん)部は第5肋間後方、正中線から7~9cmのところにあります。
心膜と心膜腔
心臓は心膜(しんまく)という漿膜(しょうまく)で覆われています(図3)。
心臓の心内腔⇒心内膜⇒心筋層⇒心外膜(臓側[ぞうそく]心膜)⇒心膜腔⇒壁側(へきそく)心膜⇒線維性心膜の順に並んでいます。心膜腔には心膜液(漿液)があり、膜と膜の摩擦を防いでいます。
心囊(しんのう)とは、心膜腔をつくる心膜の袋状構造です。
心臓の骨
心臓には、心臓骨格と呼ばれる輪状の線維性結合組織(線維輪)があります(図4)。
心臓骨格は弁の周囲にあり、弁と弁を付着させ、心房、心室のすべての心筋線維が固定されています。
心臓骨格には、心房と心室を電気的に絶縁する役割もあります。
心臓の周辺臓器
心臓は左右に肺、下方を横隔膜(おうかくまく)、心膜に包まれ位置しています。
縦隔は心臓のほかにも、さまざまな構造物(気管、気管支、食道、リンパ節、神経など)が存在します(図5)。
心臓の断面図と各部の名称
心臓は、右心房(うしんぼう)、右心室(うしんしつ)、左心房(さしんぼう)、左心室(さしんしつ)という4つの部屋に分けられ、「右心房-右心室」の右心系と、「左心房-左心室」の左心系という2つの系列からできています(図6)。
心室の内部では乳頭筋が発達し、腱索(けんさく)によって房室弁(三尖弁[さんせんべん]、僧帽弁[そうぼうべん])と連絡し、血液を効率よく送り出すために機能しています。
右心系と左心系は直列でつながったポンプのようなしくみになっていますが、血液の流れは逆流せず一方向に流れるように弁があります(図7)。
心臓の弁
心臓には血液の流れを一方向に維持する(逆流を防ぐ)ために、4つの弁があります(図8)。
4つの弁は、右心房と右心室の間の三尖弁、右心室と肺動脈の間の肺動脈弁、左心房と左心室の間の僧帽弁、左心室と大動脈の間の大動脈弁です。心房と心室の間の弁(つまり三尖弁と僧帽弁)を房室弁、心室と動脈の間の弁(つまり肺動脈弁と大動脈弁)を半月弁とも呼びます。
肺動脈弁は大動脈弁よりも高い位置にあります。弁の位置を知っておくと、心音を聴くときに役立ちます。
弁のはたらき
弁は心筋には含まれません。弁は腱索により心筋(乳頭筋)と連結して、心収縮に連動した受動的な開閉を行います(図9)。
文献
- 1)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017:2-29.
- 2)稲田英一,医療情報科学研究所:イメカラ 循環器 ̶イメージするカラダのしくみ.メディックメディア,東京,2010:2-19.
- 3)堀正二監修,坂田泰史編:図解 循環器用語ハンドブック 第3版.メディカルレビュー社,東京,2015.
- 4)小澤瀞司,福田康一郎監修,本間研一,大森治紀,大橋俊夫 他 編:標準生理学 第8版.医学書院,東京,2014:632-654.
- 5)坂井建雄,河原克雅編:カラー図解 人体の正常構造と機能 【全10巻縮刷版】 第3版.日本医事新報社,東京,2017:82-107.
- 6)増田敦子編著:身体のしくみとはたらき̶楽しく学ぶ解剖生理.サイオ出版,東京,2015.
- 7)大谷修,堀尾嘉幸:カラー図解 人体の正常構造と機能 第2巻 循環器 第3版.日本医事新報社,東京,2017:82-107.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 循環器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社