下垂体前葉ホルモン|内分泌
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、下垂体前葉ホルモンについて解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
Summary
- 1. 下垂体前葉ホルモンは、内分泌器官に作用する刺激ホルモンである。
- 2. 下垂体前葉ホルモンは、すべてペプチドホルモンである。
- 3. 成長ホルモンおよびプロラクチンは効果器ホルモンである。
下垂体前葉ホルモン
下垂体前葉ホルモンには、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、性腺刺激ホルモン(FSH、LH)、成長ホルモン(GH)およびプロラクチン(PRL)の5つがある(図1、表1)。
これらのなかでTSH、ACTH、FSH およびLHは刺激ホルモンであり、直接的な生理作用は示さない。
図1下垂体の位置と形
表1下垂体前葉ホルモン
これらは内分泌腺(甲状腺、副腎皮質、卵巣、精巣)を刺激して、それぞれ甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、卵巣ホルモン、精巣ホルモンを分泌させる。
GHおよびPRLは、刺激ホルモンではなく、それ自身が生理作用を発揮する最終的なホルモンである。このようなホルモンを効果器ホルモン(effector hormone)という。GH はソマトトロピン(somatotropin)ともよばれる。
ホルモンの名称
刺激ホルモンの語尾の tropin は、trop + in の合成語である。trop は、ギリシャ語の tropeを語源とし、「・・・ を向くもの」という意味がある。inは、ラテン語で「促進させる物質」の語尾に付く(例えば、insulin)。ホルモンには inで終わる語が多いが、これらみな促進させる物質という意味をもつ(onで終わる語は、逆に抑制する物質という意味がある)。
adrenocorticotropic hormone(ACTH)の語源は、ギリシャ語で adが近くの、renoが腎臓、corticoが皮質を意味する。gonadoは、ギリシャ語で性腺の意味である。proは、ギリシャ語で「・・・ に賛成」という意味がある。lactは乳、inは促進させる物質の意味なので prolactinは、乳汁の射出を促進させる物質である。
※編集部注※
当記事は、2017年2月3日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版