GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)|知っておきたい臨床で使う指標[2]
臨床現場で使用することの多い指標は、ナースなら知っておきたい知識の一つ。毎回一つの指標を取り上げ、その指標が使われる場面や使うことで分かること、またその使い方について解説します。
根本 学
埼玉医科大学国際医療センター 救命救急科診療部長
GCS(Glasgow Coma Scale)
GCS(Glasgow Coma Scale)はTeasdale Gらによって1974年に発表された意識レベルの評価指標で、現在、世界的に広く使用され、世界標準となっています。
〈目次〉
GCS(Glasgow Coma Scale)
GCSを主に使う場面と使用する診療科
GCSは救急外来や集中治療室など限られた場所で使用されており、使用する診療科も救急科や脳神経外科など一部の診療科であることが多いと思われます。
同じく意識レベルを評価する指標にJCS(Japan Coma Scale)がありますが、こちらは病院前救護(プレホスピタル)も含め、多くの場所で使用されています。
GCSで何がわかる?
意識レベルを「開眼」を4段階、「発語」を5段階、「運動」を6段階に分け、それぞれの最良応答で評価し、合計点で重症度・緊急度を判断します。
点数が低いほど重症度・緊急度が高いです。
GCSは3つの運動機能で判断するという多軸指標であるため、認知および覚醒反応をより具体的に知ることに長けています。
ただし、JCSと同じく、一次性脳障害、特に脳血管障害や頭部外傷の重症度や緊急度、あるいは進行度を知る目的で作成された評価指標であるため、精神状態を評価するには適していません。
GCSの使い方
開眼・発語・運動をそれぞれ「最良」で評価して点数をつけ、その合計点(最軽症は15点、最重症は3点)を付記します。
たとえば、目を閉じていても、軽い呼びかけで開眼するのであれば開眼は「4点」と評価して構いません。また、言語と運動は数回繰り返し、最も良い反応で評価します。
GCS8点以下は緊急度が高いと判断し、呼吸や循環に注意しながら早急に原因を検査する必要があります。また、短時間で合計点が2点以上低下した場合も病態が急速に悪化していると判断しましょう。
合計点が13点以下であった場合は頭部CT検査などで頭蓋内病変の有無を調べる必要があります。
GCSを実際に使ってみよう
症例1
24歳の女性。交通事故で搬送されてきた。
呼びかけでは開眼せず、痛み刺激でかすかに開眼するがすぐに目を閉じてしまう。
質問には応じず、「う~っ、う~」とうなり声を上げている。指先に痛み刺激を加えると指を引っ込める運動を示す。GCSを使って意識レベルを評価してください。
答え:GCS E2 V2 M4 合計8点
呼びかけで開眼せず、痛み刺激でかすかに開眼するのでEは2点。
質問に応じず、発語もなくて「う~っ、う~」とうなっているだけなのでVは2点。
痛み刺激に対して引っ込める運動を示す、すなわち逃避行動を示すのでMは4点となり、合計8点。
症例2
82歳の男性。いつもと様子が違うのに家族が気付き自家用車で救急外来を受診した。
目を閉じているが大きな声で呼びかけると開眼する。
質問には答えず、ぶつぶつと独り言を繰り返している。命令に応じることはできないが、痛み刺激に対して右手で払いのける動作を示す。GCSを使って意識レベルを評価してください。
答え:GCS E3 V3 M5 合計11点
大きな声で開眼するのでEは3点。
質問には応じないが独り言を繰り返しているのでVは3点。
痛み刺激に対して右手で払いのけるのでMは5点となり、合計11点。
症例3
78歳の女性。脳梗塞の診断で集中治療室に入院となった。
開眼しているが質問に対しては、「私どうしたの? ここはどこ? ごはんの準備をしなくっちゃ」など会話は成立しない。
「手を握ってください」と言うと右手は握るが左手は握らない。GCSを使って意識レベルを評価してください。
答え:GCS E4 V4 M6 合計14点
開眼しているのでEは4点。
質問に答えることができず、話はしているが会話が成立しないのでVは4点。
命令に対して右手で応じることができるのでMは6点となり、合計14点。
さらにプラスα
意識が清明であることを「クリアー(clear)」と表現されることがありますが、正しい医学用語は“alert”ですから注意しましょう。