「夜勤で体を壊さないために」効果的な睡眠について看護師が知るべき3つのエビデンス

夜勤に従事する看護師にとって、健康を害さないための睡眠のとり方は重要です。

今回は、看護師が知っておきたい効果的な睡眠についてのエビデンスを3つ紹介します。

【ライター:白石弓夏(看護師)】

効果的な睡眠を得られた状態を示すイメージ画像

 

 

【1】「寝だめ」はNG!

「サーカディアンリズム」(概日リズム)の研究は、昨年(2017年)のノーベル生理学・医学賞受賞でも話題となりました。

 

「サーカディアンリズム」に、夜勤の時間を重ねてみると、このようになります。

 

サーカディアンリズムに看護師の夜勤を重ね合わせて適切な睡眠について示す図

<文献2)を一部改変>

ちょうど、夜勤に入る時間帯から体温が下がり始め、仮眠が必要な時間帯にさしかかることがわかります。

 

この図(サーカディアンリズム)と逆行してしまう睡眠の方法が「寝だめ」です。

これまでの研究により、夜勤明けの「寝だめ」はNGであることがわかっています。

 

2交代の場合には特に、夜勤明けにすぐ就寝し、夕方まで寝てしまうことがあると思います。

「寝だめ」をして、体温の高い時間に眠ってしまうと、サーカディアンリズムの乱れにつながります。

その後、体温が低い時間帯に眠れなくなるなど体調面にも直結します。

 

夜勤の前後で仮眠をとりたい場合には、体温が低い午前中に2時間程度の仮眠をするのが効果的なのではないかと、個人的には感じています。

 

また、夜勤明けから夕方まで寝て睡眠時間をたっぷりとっても、体の疲れがとれないように思うことはありませんか?

 

日中の体温が高い時間帯は、活動に適した状態となるので睡眠の質は比較的低くなります。

 

日本看護協会では夜勤中に仮眠をとることが、効果的な疲労回復の方法であるとしています。

次に、夜勤中の効果的な仮眠方法についてお伝えします。

 

 

【2】夜勤中の仮眠は、夜勤前より3倍効果的

夜勤前と夜勤中に取得する仮眠の効果の差を示した図

<文献3)を一部改変>

 

病院看護師を対象にした研究では、夜勤中に1時間の仮眠をとると、夜勤前に3時間の仮眠をとるのと同等に夜勤後の疲労が抑えられると示されています。

 

可能であれば仮眠時間は、2時間確保するのがベストとされていますが、短時間での仮眠でも効果があることがわかっています。

 

しかし、夜勤中の睡眠の大切さを理解していても、なかなか思うようには時間を確保できないのではないでしょうか。

「夜勤前に3時間寝さえすればいい」というわけではなく、体温が最も下がる夜勤中に、仮眠時間を確保することが重要です。

 

所属施設によってさまざまな課題があると思いますが、まずは夜勤従事者同士で、仮眠の大切さを認識し、適切に確保するための環境を整えることが大切だと思います。

 

 

【3】自分のリズムを知る

あなたは朝型ですか?夜型ですか?

ある研究では、朝型の人と夜型の人とで、体温が最も下がる時間帯には2時間以上の開きがあると示されています。

 

「夜型」と「朝型」それぞれの体温変化

<文献4)を一部改変>

 

体温が一番下がる時間帯が、最も眠気を感じ、作業効率が下がる時間帯です。

自分が朝型なのか、夜型なのかのリズムを知り、適切な時間帯に睡眠をとることが必要になります。

 

2交代の場合、夜勤のパートナーと仮眠を先にとるか後にとるかの話し合いになりますよね。

私の場合は、午前1時から3時の仮眠のほうが、朝6時からのラウンドが楽!という感覚があります。

 

逆に、先輩では、3時から5時の仮眠のほうがいい!という人もいました。

 

この場合、先輩は「夜型」、私は「朝型」のリズムであることが想定されます。

 

また、朝型/夜型の差だけではなく、夜勤自体の得意・不得意も人によって違います。

私が病院に勤務していた頃は、夜勤が得意で週に何度か入っていたのですが、同僚の中には「生活パターンが狂うから夜勤は週に1回くらいがいい」という人もいました。

 

「人がやっているのだから」自分も同じ勤務ができるとはかぎりません。

自分が得意なパターンをよく見極めることが大切です。

 

 

夜勤・交代制勤務の負担による心身の健康への影響

夜勤は、心身の健康にさまざまな影響を与えるといわれています。

・睡眠の質の低下  

・疲労回復効果の低下

・負の感情ストレスの解消機能の低下

・月経周期の乱れ

・循環器への負担による高血圧、心疾患など

ホルモンバランスの乱れによる糖尿病がんなど長期的な影響も

…さらに、加齢に伴い負担が大きくなる傾向がある

<日本看護協会: 「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」より引用>

 

「寝だめしない」「夜勤中の仮眠を適切に」「自分のリズムを知る」というポイントをおさえたうえで、夜勤のリズムがつかめない場合は、体調を崩す前に師長と話し合いの場を設けるのも一つの手です。

 

若手看護師は慣れるのに時間がかかるかもしれませんが、自分の特性をよく理解してもらったうえで、シフトを作成してもらえるように伝えてみましょう。

 

夜勤が心身に与える影響が最小限になり、看護師の健康が守られることを切に願っています。

【ライター:白石弓夏(看護師)】

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(参考)

1) 「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」:PDF,p.16-17(日本看護協会)

2)夜勤中の仮眠を取りましょう ~夜勤とうまくつきあうために:PDF(日本看護協会)

3)斉藤 良夫, 佐々木 司:病院看護婦が日勤ー深夜勤の連続勤務時にとる仮眠の実態とその効果.産業衛生学雑誌 40 巻 3号:67-74(1998)

4)Baehr EK, et al:Individual differences in the phase and amplitude of the human circadian temperature rhythm: with an emphasis on morningness-eveningness. J Sleep Res 9:117-127(2000)

 

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