ベッドからの転落防止対策

『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。

今回はベッドからの転落防止対策について解説します。

 

 

山元恵子
富山福祉短期大学看護学科長

 

 

病院における事故では、成人・小児を問わず、ベッドからの転落・転倒が圧倒的に多い。

 

ベッドからの転落…ヒヤリ・ハット!

CASE1 母親が気をとられた隙に!

母親が、ベッド柵を最下段に下げたまま、床頭台の整理に気をとられている。母親を追ってベッドの端まできた患児は…、そのままベッドから飛び降り、転倒! 

 

家族の面会中、ベッドから転倒・転落する事故が多く報告されている。家族がそばにいても、患児のベッド柵は必ず上げておくよう指導する(図1)。

 

図1 患児のベッド柵は必ず上げておく

患児のベッド柵は必ず上げておく

 

うっかり!

■ベッド柵を下げたまま、患児から目を離した!
→ベッドサイドのそばにいるときも、ベッド柵は最上段まで上げて、患児の転落を防止する。

 

CASE2 ベッド柵が斜めに!

ベッド柵が斜めになり、片方のレバーがしっかり固定されていない…(図2)。この状態に気づかず、家族は室外に出てしまった。
やがて、患児が立ち上がり、ベッド柵につかまったところ、ベッド柵が外れ、患児はそのまま転落!(図3

 

図2 ベッド柵が斜めで固定されていない

ベッド柵が斜めで固定されていない

 

図3 ベッド柵が外れる

ベッド柵が外れる

 

うっかり!

■ベッド柵が斜めになり、片方のレバーが固定されていない!
■ベッド柵は水平だが、レバーが固定されていない!
→ベッド柵の上げ下げの際は、所定の高さにしっかりととめ、きちんと固定されていることを確認する。

 

CASE3 物があふれ、散らかったベッド

枕や布団、タオル、おもちゃがあふれ、散らかったベッドで患児が遊んでいた(図4)。おもちゃに飽きた患児は、積み重なった枕や布団を踏み台に、ベッド柵によじ登った(図5)。
そのまま、前のめりに転落!

 

図4 物があふれたベッド

物があふれたベッド

 

図5 踏み台になるようなものを放置しない

踏み台になるようなものを放置しない

 

うっかり!

■使用後の布団や掛け物を、ベッド内に放置した!
■おもちゃや着替え、タオルなどがベッド内に散乱した!
→ベッド内には、踏み台になるようなものを放置しない。

 

CASE4 いつのまにか元気に!

入院した当初はぐったりとベッドに横たわり、動く気配のなかったA君。しだいに元気になり、ある日、ベッド柵を鉄棒代わりにして遊び始めた。ジャンプ!(図6)勢い余って、ベッド柵を乗り越えて転落!

 

患児は回復するにつれ、思いもかけない行動に出る場合がある。回復期だからこそ、注意深く目を離さないことが必要である。

 

図6 ベッド柵を乗り越える危険がある

ベッド柵を乗り越える危険がある

 

うっかり!

■患児は臥床していて、起き上がらないと思い込んでいた!
→回復時の行動の変化を見逃さず、患児から目を離さない。

 

 

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ベッドを離れるとき、ベッド柵を下げるとき

ベッドから目を離す際は

患児のいるベッドを離れたり、荷物を整理するために腰をかがめたりする際は、必ず、ベッド柵を最上段まで上げる必要がある(図7図8)。

 

図7 ベッド柵は必ず上げておく

ベッド柵は必ず上げておく

 

ベッド柵を上げなかったり、ベッド柵が低い場合、患児がのぞき込んだり、つかまり立ちをして転落する原因になる。病院のベッドは患児にとって大人が思う以上の高さであり、転落は骨折などの原因になる。

 

図8 ベッド柵を下げたままにするのはNG

ベッド柵を下げたままにするのはNG

 

また、ベッドから離れるときカーテンを閉めると、患児の様子が観察できず、危険である。

 

POINT

家族への指導ポイント
■ベッドを離れるときはカーテンを開け、患児の様子を観察しやすい環境にするよう指導する。
■面会終了時やベッドから家族が離れるときは、必ずベッド柵を上段まで上げるよう、入院時や面会時に指導する。

 

ベッド柵を下げる際は

遊びや処置などでベッド柵を下げる際は、必ず、患児の正面に立ち、目を離さないようにすることが必要である(図9)。
また、すぐに患児を保護できるよう、手をかざすなどの配慮も大切である。

 

図9 患児から目を離さない

患児から目を離さない

 

POINT

■ベッド柵を下げたら、患児の正面に立ち、目を離さない。

 

 

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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ

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