車椅子の種類と使用方法

『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。

今回は車椅子の種類やベッドからの移動について解説します。

 

 

佐々木祥子
東京都看護協会/小児看護専門看護師

 

 

車椅子の種類

車椅子で、患児を安全・安楽に移送するため、車椅子の構造、操作方法を十分に理解しておく必要がある。

車椅子には、小児用と成人用がある(図1)。小児の体格に合った車椅子を選択し、転落やずり落ちなどを防止する。

 

図1 小児用と成人用の車椅子

小児用と成人用の車椅子

 

 

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ベッドから車椅子への移動

❶患児に車椅子に移動することを説明する。
ベッドに対して30度の角度で車椅子を置き(図2)、フットレストを上げて、ストッパーをかける。

 

図2 ベッドに対し30度の角度で車椅子を置く

ベッドに対し30度の角度で車椅子を置く

POINT

■患児に負担をかけないよう、最短距離で移動する。
■援助者にとっても最小限の負担で移動できるようにする。

 

❷❸援助者は患児の腋窩から手を差し入れ、背中に回して反対側の腋窩に手を置く。もう片方の手で患児の膝を支え、ゆっくりと持ち上げて体を回転させ、車椅子に腰かけさせる(図3図4)。
腰ベルトを締め、フットレストを下げて両足を置く。

 

図3 患児の体を支える

患児をゆっくり持ち上げる

 

図4 患児を車椅子に腰掛けさせる

患児を車椅子に腰掛けさせる

 

POINT

酸素吸入や点滴を行っている場合は(図5
■患児が酸素吸入中の場合は、移動前にまず、マスクやカニューレのチューブを車椅子の酸素ボンベに接続する。

■点滴を行っている場合は、移動前に点滴ボトルを車椅子側のスタンドにかけ替える。

■酸素チューブ、輸液ラインともに車輪に巻き込まれないよう座面内に収める。

 

図5 酸素吸入や点滴中の患児の車椅子移動

酸素吸入や点滴中の患児の車椅子移動

 

 

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輸液ポンプ・酸素ボンベを装着する場合

車椅子に輸液ポンプや酸素ボンベを装着する場合は、かなりの重量となり、重心が後ろに偏る。このため、転倒などの危険を避けるため、砂嚢などを座面の下に置いてバランスをとる(図7)。酸素チューブ、輸液ラインが車輪にからまることがないよう、注意する(図6図8)。

 

うっかり!

■患児を車椅子に乗せてから忘れ物に気づき、取りに戻ってしまった!
→車椅子に乗せたまま患児のそばを離れることがないよう、必要物品は事前に準備する。

 

図6 車椅子に輸液ポンプ・酸素ボンベを装着する

車椅子に輸液ポンプ・酸素ボンベを装着する

 

POINT

■輸液ポンプはなるべく低い位置に取り付け、重心を低くして安定させる。
■輸液ポンプの操作パネルが援助者側に向くよう、取り付ける。

POINT

■輸液ポンプや酸素ボンベを装着する場合は、重心が後ろに偏るので、前部の座面下に砂嚢などを置いて、バランスをとる(図7)。

 

図7 前部の座面下に砂嚢を置いてバランスをとる

車椅子前部の座面下に砂嚢を置いてバランスをとる

 

図8 酸素チューブや輸液ラインが車輪にからまないよう注意する

酸素チューブや輸液ラインが車輪にからまないよう注意する

 

POINT

■酸素チューブや輸液ラインが、車輪にからまないよう注意。
■チューブ類は座面内、患児の膝上に収める。
■患児の状態に応じて、SpO2などのモニタリングを行いながら移送する。

 

 

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車椅子での移送

患児が車椅子に深く腰かけていること、フットレストに足が乗っていることを確認。ひざ掛けをかけ、患児の様子を観察しながら、車椅子を操作する(図9)。

 

図9 患児の様子を観察しながら操作する

患児の様子を観察しながら操作する

 

POINT

移送前は、ここに注意!
■両足はきちんとフットレストに乗っているか?
■深く腰かけ、腰ベルトを締めているか?
■チューブ類は、座面内に収まっているか?

 

 

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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ

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