アイダ・ジーン・オーランドの看護理論:看護過程理論
『新訂版 実践に生かす看護理論19 第2版』(サイオ出版)より転載。
今回はアイダ・ジーン・オーランドの「看護過程理論」について解説します。
阿部智恵子
石川県立看護大学看護学部 准教授
- オーランドの看護理論は、患者が「そのとき・その場」の苦痛を表現でき、看護師は患者が自分の援助を必要としているニードを認識するという、「看護師と患者の相互関係」をもとにした看護過程を記述するものである。
- オーランドの看護理論は、患者と看護師の相互作用を理解することに焦点をあてている。これは、オーランドの理論の3つの要素─①患者の行動、②看護師の反応(患者の行動の解釈)、③看護師の行為、から成り立っている。
- オーランドは、看護機能について「援助を必要とする患者のニードが、看護師自身の行為によって、もしくはほかの人々の援助によって、満たされたかどうかを確認する直接的責任」(1964)である、と定義する。これは、看護が患者の行動に始まり、看護師の反応と行為につながり、最後に患者の行動に戻ることからも重要である。
- オーランドの看護理論は、看護師と患者の相互作用をとおしての一連の「過程」として説明される。これは、看護の特徴を「過程」というものから論じているためである。
- オーランドの看護理論は、「相互作用」で表される。患者と看護師の間で取り交わされる情報と行為のやりとりが常に行われることが必要であり、患者の状況に応じた動的な活動といえる。
- オーランドの看護理論は、援助が必要なのかどうかを見定めることを必要とする。それはニード志向性と関連があり、「病気」に焦点をあてることで強調される。
- オーランドの看護理論では、看護師が必要なこととして、自動的な行動ではなく、訓練をとおして問題解決的であり、かつ熟慮した行為をとることが必要であると考えている。これは、看護のダイナミックさを表している。このような経験をとおして看護を学問的に高めることが大きな目的といえる。
オーランドの看護理論
オーランドの看護理論は、「人間関係論を基盤にした看護過程論」といわれている。オーランドの看護理論を理解するには、まず看護活動とはどういうものかについて考える必要がある。
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看護過程での3つの要素
オーランドの理論は、3つの要素、すなわち①患者の行動、②看護師の反応(患者の行動の解釈)、③看護師の行為、から成り立っている。
これらの構成要素が互いに絡み合うことによって成り立つのが看護過程であり、それが反復しながら展開されるのが看護活動である。
では、オーランドは看護の専門機能についてどうとらえていたのだろうか。彼女は「看護の専門的機能は、患者のそのとき、その場の援助を要するニードを見いだし、満たすこと」(1964)としている。これが、臨床の現場でどのような流れによって達成されるかについて考えることにする。
- 1患者の身に無力感、苦しみ、苦痛が出現する。患者の行動はニードの表現であり、これには言語的なものと非言語的なものがある。
- 2看護師は、患者が自分の援助を要するニードを認識できるよう積極的に援助し、ニードが充足できるように妥当な援助方法を一緒に見いだす。
- 3看護を実施し、ニードの充足状態を確認する。看護師の行為は、患者の行動の解釈に基づく。これには、意図的なものと非意図的なものがある。看護過程は、患者の状況の変化に応じた動的な活動である。訓練により、積極的に訓練された行為(問題解決的な行為)をとることが重要になってくる。
- 4評価には、患者の苦悩や苦痛がどのように変わったか、患者の行動に改善がみられたかという視点が大切になる。
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看護実践の理論
また、オーランドの看護理論は、「効果的看護実践の理論」とよばれる面ももつ。彼女の看護経験は精神衛生と精神科看護などによるものであった。
臨床の看護師であり、また研究者でもあったオーランドは、実践で活用でき、かつ看護を学問的に高められるようにという視点で看護理論を構築していった。
彼女は、医学とは異なる看護の専門性、独自性が必要であると考えた。
自らの豊富な臨床経験から考え出した看護理論は、具体性と実践に富んでおり、臨床現場でも受け入れやすい看護理論であった。
また、実践と看護理論のつながりが明確である点も、オーランドの看護理論の特徴である。
オーランドの看護理論は、1950年代後半に開発されたものである。当時の看護理論がそうであったように、オーランドの看護理論もまた、前提や概念、命題については、明確には書かれていない。
しかし、今日の看護に十分に通じるものがあり、忘れがちになる看護の相互作用に関する多数のデータから分析され、導かれてつくり出された。
豊富な臨床経験をもとにつくられた看護理論であるため、看護実践にとって具体的な指針としての役目も果たしている。
また、基盤になった研究で使われた研究方法も、1950年代に社会学で発展した象徴的相互作用論の質的研究方法が使われており、当時では目新しい研究方法であったといえるだろう。
またオーランドは、医学は患者の病気を確定するものとする一方で、看護は病気の人にケアを提供するという、「看護の専門性・独自性」も視野に入れた。そして、看護師は自動的、受け身的な行為ではなく、訓練をとおして問題解決的に、かつ熟練した行為を習得することが必要であると考えた。
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看護師と患者の相互作用
オーランドの基本的な考えのなかでもとくに重要な点は、「看護師と患者の相互作用」だといわれている。では、両者の相互作用がどのように看護の機能に結びついていくのだろうか。
患者が一般に不安や苦痛から援助を求める原因として、オーランドは「身体上の制約」「医療における否定的反応」「ニード伝達の不能力」という3点をあげている。
なかでも看護師と患者の相互作用という観点から、「ニード伝達の不能力」についてとくに強調している。
患者がニードを伝達するために看護師が行う重要な機能は、看護師が常に患者と情報や行為のやりとりを行うことである。
これは患者の行為に始まり、看護師の反応と行為につながり、最後に患者の行動に戻るという、一連の看護過程のなかで繰り返されていく「相互作用」と説明することができる。
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オーランドの看護理論から得るもの
オーランドは、容易に実践できる看護理論をめざして成功した。ほかのどの看護理論家よりも、容易に実践に応用できることは、評価されるべきだろう。
一方で、オーランドの看護理論にも限界があることを知っておく必要がある。たとえば、長期的な計画を立てる場合や、患者自身にニードが知覚していないなかで健康改善に向けて動機づけしなければならない場合には、オーランドの看護理論を活用するのは難しい。
オーランドの看護理論は、相互関係理論に最も一致するものであり、看護に対して直感的というよりも論理的な実践へのアプローチを提供するものだといえる。
相互作用を活用した思考のプロセスが、看護過程そのものであるといえる。
オーランドは、看護の知識体系化に寄与し、看護の学問性を高め、今日の看護に通じる大きな功績を残した。具体的には、
- 看護のもつ専門性、独自性の探求
- 看護師のもつ専門性、独自性の探求
- 患者個人に焦点をあてた看護活動
などがあげられるだろう。
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看護理論のメタパラダイム(4つの概念)
1人間
オーランドは、人間について定義していない。そこで、ここではまず人間という存在について考えてみる。
人間は言葉を使う一方で、言葉を使わない非言語的な行動をも示す存在でもある。
人間の住んでいる世界では、日々さまざまな変化が起こっている。その変化に対して人々は、状況に向かって対応しようとする。
人間は元来、このようなさまざまな状況に対し、ニードをもち、それに対する行動ができる力のある存在である。
オーランドの看護理論では、自分でニードが満たされない人を対象にしている。ニードは人間を発達・成長させるものであり、ニードが満たされないときには、苦悩や苦痛が生じるという考えをもつ。
また彼女は、患者だけでなく看護師も含めた人間像を提示し、人間の個別性を重視するということを、とくに強調している。
これらの考えは、ダイナミックな人間関係をもとにしたオーランドの看護理論の基礎をなす考え方といえるだろう。
彼女の看護理論では、人間は相互作用をもとに変化するものであるととらえられており、それが看護師の役割を考える基盤にもなっている。
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2環境
オーランドは、環境や社会については言及していない。環境については、看護師と患者の間での相互作用という概念において、間接的に言及されている。
看護師あるいは患者の行動が環境のなかでどのような影響を受けるかについては、明確な定義はされていない。
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3健康
健康についても、明確に論じられてはいない。まずはオーランドが、看護師の責務についてどうとらえていたかを考えることから始めよう。
ここでは、「ニード」がキーワードになっている。
ニードというものは人の発達・成長を促すと前にも述べたが、オーランドは看護師の責務は「患者のニードを満たすこと」といっている。
看護師の責務が患者のニードを満たすことであり、自力でニードが満たされている場合には、看護師の助けはいらないと考えている。オーランドが、ニードというものを主軸にとらえていることがよく理解できる。
オーランドの看護理論のニード志向性は、「病気」に焦点を置くことで強化されている。
オーランドは自力でニードが満たされること、かつニードが満たされることによって苦痛や不安のない状態になることが、健康にとって重要な要件であると考えている。
彼女の看護理論から考えると、健康とは精神的・身体的な不快がない状態で、さらにつけ加えれば、その個人にとっての満足感、充実感、快適さがある状態、とみていたのではないだろうか。
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4看護
オーランドの考える看護の目的は、「患者のニードを満たすために、患者が求める助けを与えること」である。
では彼女は、看護をどのようにとらえていたのだろう。要約すると、自力では解決が困難な心身両面の問題を援助する行為が、すなわち看護であるととらえていた。
一方で、オーランドは看護は専門職として自立的に機能することが、あるべき姿だととらえていた。
つまり彼女は、看護を医学の実践から区別していくことが非常に重要であると考えていたのである。
つまり彼女には、看護は独立して機能する1つの専門分野であるという思いが強かったといえる。
医学とは異なる看護の専門性・独自性を、オーランドは常に追求していた。
つまり、患者が自分で苦痛を表現でき、看護師は患者がニードを認識できるように積極的に援助し、相互作用を活用しながらニードが充足できる妥当な援助方法を一緒に見いだしていく。そして実施し、ニードの充足状態を確認していく。
看護師はそのとき、受け身的な行為ではなく、訓練を重ねて熟練した行為をすることが、必要であり、重要なのである。
これらのことを踏まえて考えると、オーランドは看護の独自性を常に考え、看護の本質を患者の心身両面の安楽を保つため患者のニードを充足することに見いだしていると考えられる。彼女の発想は、今日の看護を考えるうえで、忘れがちになっている大切なものを思い出させてくれるものである。
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看護理論に基づく事例展開
オーランドと看護過程
オーランドの看護過程は、「そのとき・その場」で、1人の看護師と1人の患者が相互関係をもつ、ということに根差したものである。ここで、一連の流れを述べることにする。
(1)患者が「そのとき・その場」の苦痛を表現でき、看護師はそれを患者行動としてとらえることができる。オーランドによれば、看護過程は患者の行動によって始まる。患者の行動はニードの表現であり、言語的なものと非言語的なものがある。
(2)患者の行動と看護師の反応の一連の相互作用は、患者が自分の援助を要するニードを認識できるよう積極的に援助する。看護師の行為は、患者の行動の解釈に基づく。これは、意図的なものと非意図的なものがある。
(3)看護師は、ニードが充足できるように妥当な援助方法を患者と一緒に見いだす。看護を実施し、ニードの充足状態を確認する。
(4)ニードが満たされたかどうかの評価が、患者が表す行動上の変化に基づいて行われる。患者の行動に始まり、看護師の反応と行為を経て、最後に患者の行動に戻る、とするからである。
(5)看護過程(看護師と患者の相互作用)によって、患者の不安や苦しみ、無力感を解消したり、精神的・身体的な不快感を解消するという目的が達成されれば、看護過程は終結する。
1アセスメント
患者をめぐる人間関係が患者に及ぼす影響をみていく。そのためにまず行うことは、患者がいま必要としているものは何かを確認することである。
確認のため、患者への質問を行うことも重要である。患者の気持ちが十分に表出できるような雰囲気づくりや気配りも大切になってくる。患者が自分の行為の特別な意味を表現できることと、患者がどんな援助を求めているかをはっきりと確かめることが重要である。
ただし、患者が自分の援助を必要とするニードを認識できていない場合もあるので、患者自らが自分のニードを認識できるようにすることも大切である。
2看護診断
看護師として重要なことは、よい人間関係を保ちながら、患者の反応をみていくことである。
看護診断は患者が自分の気持ちを表出でき、看護師も自分に求められていることを自覚し、看護師・患者の相互作用が患者にとってよい影響を及ぼしているかをみる。
よい影響とは、たとえば患者の不安や心配が消失または軽減することで、病気の改善がみられることなのである。また、患者の満足感を高め、行動および自助能力の改善が目標とされる。
3看護計画立案
患者が安心して療養でき、療養生活を意欲的に過ごすことができるように必要な看護を計画する。
つまり、病気に反応する患者の能力を高めるために、看護師との相互作用の効果があるように計画を立案することである。
ここでは、看護過程の目的をしっかりともち、計画立案をしていくことが必要である。看護過程で患者の無力感、苦しみ、苦痛からの解放、精神的・身体的な不快感を解消することが目的になる。
4実施
患者の潜在的なニードを明確にし、オーランドの3つの要素に基づく一連の行動を行っていく。これは、患者の状況の変化に応じた動的な活動である。
5評価
- 看護過程(看護師と患者の相互作用)によって、患者の無力感、不安、苦しみが解消したか。
- 精神的、身体的な不快感は解消したか。
- 援助を要するニードが満たされたか。
- 患者の満足感、充実感、快適さが得られたか。
- 患者の行動が改善されたか。
という点から評価を行っていく。
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義父母との関係に悩む産後の女性の事例
Aさん、24歳、女性。専業主婦。夫(28歳)は、大手企業のエンジニア。現在は夫との二人暮らし。出産を機会に夫の両親と同居する予定である。結婚生活2年目の出産であり、初産である。出産は、経腟分娩で、2700gの男児。AP9点。
義父母は、毎日のように面会に訪れ、「跡取りができた」「よい子に育てなくては」「この子は○○家の宝」というような言葉かけを、Aさんにしている。とくに義母は、元教員で几帳面な性格であり、療養中のAさんの過ごし方や産まれた児の抱き方などにも、つきっきりでこと細かく指導している。
現在出産3日目で、傷の回復は順調であるが、出産後の生き生きした表情は消え、気分的に落ち込んでいるのがわかる。ときどき窓の外をぼうっと見ていたり、夫との会話も弾まない。とくに、義母が面会に来る時間が近づくと落ち着かなくなったり表情も暗くなっている様子がみられる。
赤ちゃんのことも、「慣れていないので怖いから」とだんだん触れるのを避けるようになった。夫は妻の変化に気がついてはいるが、何が原因かわからず困っている。
1アセスメント
まず、Aさんに影響を与えている要因を確認する。
義母との関係が、Aさんの行動上の変化に影響を及ぼしていることがうかがえる。次に、患者の心身の状況から、いま患者がとくに必要としているものは何かと考えてみる。
さらに、Aさんの性格、夫との関係、義父母との関係など、情報の不足もあると考えられるので、必要な情報はできるだけ早く収集する。看護師の反応(患者の行動の解釈)によって看護師の行為が決まってくる。
2看護診断:「義母の過度の期待と介入による育児に対する自信喪失」
初めての出産は、患者の環境を大きく変える。大役をなし終えたという大きな充実感とともに、今後の育児への不安も大きくなる。
そのようななかで、義母によること細かな指導はかえってプレッシャーになり、患者の自信を喪失させる結果に結びついたと考えられる。
また、日頃から同居しているわけではなく、義母─嫁間のコミュニケーションが十分とられておらず、人間関係上の希薄さも、それを助長しているように思われた。
この点に注目し、上記の診断がされた。
3計画・実施
(1)一般状態の観察
(2)患者の気持ちをよく聞く
なぜ、気持ちが落ち込んでいるのかを患者自身の言葉で表出できるように働きかける。
不安の原因を自分で自覚でき、どうしたいのかというニードを表出することができるようにする。看護師は、患者が自分の援助を要するニードを認識できるように、積極的に援助することが必要である。
(3)看護師は夫や義父母とも話し合いをもつ
夫や義父母の気持ちを大事にしながら、現在の状況を話し協力を得る。面会の回数、言葉かけについても話し合う。
(4)看護師は、赤ちゃんがかわいいという気持ちがもてるように、患者の気持ちに寄り添いながら、自分が抱いているところをみせたり、ゆっくりと過ごしてもらう時間をつくった。指導というかたちではなく、赤ちゃんとの自然な触れ合いがもてるように配慮した。
以上、今回の事例では、看護師と患者の相互行為により、患者の気持ちの安定につながるように援助を行った。
4評価
実際に実施したことが患者によい影響を及ぼしたか、患者の行動が変わったかなどについて評価を行う。
援助を要するニードの把握
- 看護師はAさんの気持ちをよく聞いた。義母から細かくいわれることから、自分に対して自信を失い、これからの育児に対しても大きな不安を抱えていることがわかった。
- 本来Aさんはおっとりした性格であり、義母の性格とは合わず、出産後の同居に対しても不安を抱いていることがわかった。
相互作用による行動の変化
- Aさんは、看護師に悩みや不安を話し、気分的にすっきりしたようである。今後のことについては、「夫とじっくり相談してみます」という声が聞かれた。育児についても、積極的にかかわっていき、母親としての役割を果たしたいという希望も話すことができるようになった。
- 看護師の働きかけもあり、ゆったりした時間のなかで児との触れ合いの時間をもったことで、児に触れることも自然にできるようになった。これからの育児に関しても徐々に自信をもてるようになったようである。
- 看護師が、家族(夫や義父母)との話し合いをもち、看護師がとらえた患者の状況を説明し、協力を得ることができた。面会回数や言葉かけについても家族の変化がみられた。
- Aさんと家族(夫や義父母)とのコミュニケーションに変化がみられた。ぎこちなかった会話が少しずつ改善され、Aさんからも家族への自然な話しかけがみられるようになり、その結果Aさんに笑顔がみられるようになった。
看護師は、患者が「そのとき・その場」の苦痛を表現でき、患者のニードを表出できるようにかかわり、看護師が自分に何を求めているのかを自覚し積極的に援助を行っていった。
その結果、患者が苦しみや不安から解放され、満足感、充足感、快適さが得られ、患者の行動が改善された事例である。
アイダ・ジーン・オーランド(Ida Jean Orlando)は、数多くの看護理論家のなかでも、とくに豊富な臨床経験をもつ人である。
彼女は、病院スタッフナース、管理者、研究者、教育者、コンサルタントとしての活動を幅広く行ってきた。これらのことは、彼女の看護理論に深く関係している。
彼女の看護理論の大きな特徴としては、臨床現場での看護実践と、その観察結果を看護理論にまとめたことである。その豊富な臨床経験から看護理論を構築し、実際に臨床現場で活用していった。彼女の願いは、看護理論を実際の看護に活用して看護を高めることにあった。
アメリカの看護を学問的に高めることに尽力した彼女は、看護の発展に多大な貢献をした看護理論家の1人として位置づけられている。
オーランドの理論は、実践性と具体性に富んでおり、今日の看護でも十分活用することができる。また、私たちに重要な気づきを与えてくれる看護理論でもある。
さらに、エール大学で同僚であったジョイス・トラベルビーの看護理論に大きな影響を与えたことでも知られている。
オーランドの歩み
オーランドは、1926年の生まれである。ニューヨーク医科大学フラワー五番街病院の看護学校を卒業して看護師資格を取得した後、1947年から看護師として働きはじめた。
1951年には、セント・ジョンズ大学で公衆衛生看護の学士号を取得した後、1954年にコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジで精神衛生コンサルテーションの修士号を取得した。
オーランドは、大学で学びながらスタッフナースとして看護実践を続けていた。そのほか、看護教員や総合病院のスーパーバイザーなど幅広い活動を行っていった。
修士号を取得した後は、エール大学の看護教員として、またプロジェクトの主任調査研究員として、1954年から1959年にかけてアメリカから研究助成金を受けながら研究を行った。
その研究をまとめて1961年に発表したものが『The Dynamic Nurse Patient Relationship:Function,Process and Principles』(『看護の探究 ダイナミックな人間関係をもとにした方法』)であり、オーランド最初の著書である。この考えが、オーランドの看護理論の基礎になった。
1961年、オーランドは結婚してエール大学を去り、さまざまな病院や地域で教育者、管理者として活躍した。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 実践に生かす看護理論19 第2版』 編著/城ヶ端初子/2018年11月刊行/ サイオ出版