フローレンス・ナイチンゲールの看護理論:環境論
『新訂版 実践に生かす看護理論19 第2版』(サイオ出版)より転載。
今回はフローレンス・ナイチンゲール の看護理論について解説します。
城ヶ端初子
聖泉大学大学院看護学研究科 教授
- ナイチンゲールの看護理論は、後になって著作より導き出されたものであるが、その後の看護理論の開発・発展の基礎をなすものである。
- ナイチンゲールの看護理論は「環境」が基本になっている。環境は人間を取り囲むすべてのものと広範囲に及んでいる。
- ナイチンゲールのとらえる「環境」は、物理的・精神的・社会的環境から成り立っている。とくに、健康的な環境で生活することが健康につながるとして、換気、日光、暖かさ、臭気の調整や騒音の抑制など主要な5要素をあげている。
- ナイチンゲールによれば、「看護」とは対象者の生命力の消耗を最小にするように、修復過程を整えることである。対象者の生命力を消耗させているものが何であるのか、見いだすための観察力と、取り除くための技術が看護師には求められている。
- 看護師の役割とは、人間を取り巻く「環境」に働きかけ、対象者の基本的ニードの充足をとおして、生命力の維持増進に向けて援助することである。
- ナイチンゲールの看護理論は、とくに人間の健康と看護の相互関係について述べているが、家族や地域のもつ健康が、対象者の健康のために重要であるといっている。また、子どもから高齢者に至るまで、幅広く活用できるものである。
- 「看護過程」について、ナイチンゲールは言及していないが、彼女の著作には看護過程がうかがえ、後の看護過程論の基礎になっている。
ナイチンゲールの看護理論
ナイチンゲールの看護理論は、アメリカなどで生み出されたさまざまな看護理論と比べると、形式において異なる。
それは、ナイチンゲールの時代には「看護理論」とよばれるものがなく、彼女の理論は後になって著作から導き出されたものであることが背景にある。
後年、「初めての看護理論」と称され、その後の看護理論の基礎になった。
ナイチンゲールの理論は、その後開発された適応理論、ニード論、システム理論に大きな影響を及ぼしたといえる。その理論の中心的な概念は、「環境」である。人間をめぐるすべてのものを「環境」ととらえている。
なかでも、物理的環境を調整することが看護の重要な要素であるとしている。看護師が調整できる環境の要素として、空気、清浄な水、暖かさ、日光、騒音、気分転換、ベッドと寝具、部屋と壁の清潔、排水および食事と栄養などがあげられる。
環境の要素の1つまたはそれ以上が欠如すれば、全体のバランスを失う。患者は、環境から受けるストレスに対応するために、エネルギーを必要以上に消費することになり、消耗につながるとしている。
したがって、このエネルギー消費をできるかぎり少なくするように、環境すなわち、自然の力が働きやすいような環境を整えることが、看護師の役割なのである。
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環境の3側面
ナイチンゲールがとらえる環境の3側面は、次のようになる(図1)。
1物理的環境
物理的環境(physical environment)とは、患者のいる場所で影響を受ける環境要素である。たとえば、空気、水、日光、騒音、排水などである。
また、物理的環境の要素は、精神的、社会的環境の要素とも相互に影響し合うので、適切な対応が必要になる。
たとえば、病院内で起きるさまざまな騒音(物理的環境要因)は、患者の気分を損ない、ひいては不眠や不安状態(精神的環境要因)に陥らせ、社会に対する行動(社会的環境要因)をもひき起こしてしまう。
騒音を最少に抑え、患者によって環境を整えれば、精神的・社会的環境も好転し、健康の修復につながるのである。
2精神的環境
精神的環境(psychological environment)とは精神面の環境であり、有害な物理的環境が患者にストレスをひき起こし、精神的な状態に影響を及ぼす。患者とのコミュニケーションも、精神的環境に含まれる。
コミュニケーションには十分な時間を使い、患者の安らぎが得られるような配慮が必要である。
3社会的環境
社会的環境(social environment)とは、社会の環境、とくに病気の予防や、病気そのものに影響を及ぼすデータの収集も含まれる。また、患者の生活する環境に影響を及ぼす社会の仕組みなども、社会的環境として考えられる。
たとえば、空気、水などの環境汚染は、人間の心身に悪影響を及ぼす。
その結果は公害病としてあまりに有名である。データ収集による汚染状況の把握は、もたらされた病気の修復や予防のために活用されている。
これら3つの環境の刺激が、図1の中心にある患者の状態と自然に働きかけ、良好な修復過程を促進させるのである。
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環境の要素
次に、ナイチンゲールのいう環境の要素について検討する。
1空気
人間が生きていくうえで、空気は必要不可欠なものである。
しかし、健康な者は、自然に当然のことのように呼吸しており、その空気について大きな関心をもっていない傾向がある。
ナイチンゲールは、とくに住居における空気の管理に関する指摘をしている。
たとえば、家族の誰かが窓を開けなければ、空気が汚れて住人の不健康をきたしてしまうというのである。そこで、新鮮な外気を窓から室内に十分取り入れることを勧めている。
しかし、現代のように大気汚染が問題視されている地域における換気の工夫や、機器による人工換気などの新たな問題などがあり、これからの課題は多い。
2日光
ナイチンゲールは、日光は病人にとって新鮮な空気に次いで必要なものであるととらえている。
日光は病人にとって多くのよい影響を与えるものであり、病室の患者の多くは壁ではなく日光の射す窓側に顔を向けている事実からもうかがい知ることができると述べている。
その光の質と量を考慮して、病室のベッドは窓から外の風景がみえ、日光が照射されるような位置に置かれる必要がある。
3臭気
下水道から発生する臭気を防止しなければならない。また、排泄物から発生する臭気や有害な空気を取り除く必要性を述べている。
室内で便器を用いる場合は、臭いが発生しないもので、患者をはじめ人々の視界に入らない工夫が必要である。
また、臭気を取り除くために芳香剤や防臭剤を用いるのではなく、臭気のもとになっている不快な物質そのものを取り除くことが重要なのである。
4暖かさ
患者が病気を修復していくためには、保温に努め、体温の喪失を防ぐことが重要である。夜気に触れることも避けるべきである。
湯たんぽや暖かい飲み物(お茶など)が、体温を修復させるために有益であると述べている。
5騒音
騒音は、音の大きさだけではなく、ひそひそ声であっても、患者の思いをかきたて増幅させるようなものは騒音になり得る。
間欠的に突然起きる騒音は、持続するよりもより大きな悪影響を及ぼすものである。
とくに、患者が就眠したばかりのときは、その患者を驚かすような音は患者を目覚めさせるばかりでなく、苦痛がよみがえるという二重の苦しみを患者に与えることになる。患者は、眠れば眠るほど修復力が高まるものである。
患者に関するひそひそ話や、長時間の会話、看護師が立てる音など、これらは思慮不足を超えて残忍な行為である。
ナイチンゲールは、看護師の責任は患者にとって騒音とは何であるかを判断し、その原因になるものを除去することであると考えていた。
6気分転換
ナイチンゲールは、患者の環境を変えることは病気の修復上重要な要素であるととらえていた。
病室の花や植物、あるいは絵を変えることで、患者の気分転換をはかることができると考えたのである。ナイチンゲールは、身体と心が相互に影響し合う関係にあることを見抜いていたものであると思われる。
7ベッドと寝具
ナイチンゲールは、寝具を環境の重要な要素であるととらえていた。
寝具は患者の身体から排出される多量の水分を吸い込む。そのため、寝具をときどき変えたり、空気を入れたりしなければ、水分はいつまでも寝具のなかにとどまり、人間に悪影響を及ぼすのである。
また、ベッドは病室の最も明るい場所に置かれるべきである。そうすることによって患者は窓の外の風景を見ることができ、気分転換をはかることができるからである。
ベッドや寝具の清潔や乾燥を行い、患者にとって安全で安楽な環境を整えることは、看護師の役割である。
8栄養と食物
ナイチンゲールは、患者に多様な食物を提供することの重要性を述べている。
9希望や助言を軽々しくしない
ナイチンゲールは、精神的・社会的環境については具体的に述べていない。
しかし、「患者が希望を抱くような発言や助言を軽々しく言ってはならない。そのような発言や助言は、患者に間違った希望を抱かせ、疲れさせるばかりで何の益もない」と考えていた。
したがって、看護師は見舞い客が患者にどのような言葉かけや会話をしているのかを気にかけて観察することを勧めている。
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ナイチンゲールの看護理論から得るもの
ナイチンゲールは、「環境」と人間の健康状態との関係に着目し、「環境」に焦点をあてた看護論と看護の取り組みを展開した。
病気を予防し、健康状態を保持・増進すること、あるいは病気の修復をはかるためにどのような方法を講じるべきか。ナイチンゲールは、看護のなすべきことは「自然が患者に働きやすいように最もよい状態におくことである」と述べているのである。
「最もよい状態」とは、いかなるものか。それは、患者のもてる生命力を最大限に発揮できるように、呼吸する空気、水、日光、食物、身体の清潔や住居の衛生などを整えることなのである。
いかに整えるかは、患者の必要性によって異なるが、患者の個別性に合わせた援助になる。
そこには、看護師の認識と援助の技術によるところも重要なポイントになるのである。
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看護理論のメタパラダイム(4つの概念)
ナイチンゲールは、看護理論の中核をなす4つの概念についてとくに規定しているわけではない。
それは、ナイチンゲールの生きた時代では、これらの概念は明確にされておらず、その後の看護学の発展から4つの概念規定がされるようになったからである。
したがって、ナイチンゲールの理論のメタパラダイムは、彼女の著作の分析をとおして導き出されたものである。
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1人間
人間について、ナイチンゲールはとくに規定していない。しかし、著作のなかでは「患者(patient)」と表現されている。
人間と環境との関係や環境の影響を受ける人間というように、環境との関係から定義されている。
また、人間は病気に対して修復しようとする力(=自然治癒力)をもっており、修復に適した環境を整えることによって患者は自分のもつ力の範囲内で修復することができるのである。
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2環境
環境は、ナイチンゲールの理論の中心をなす概念である。ナイチンゲールの考えた環境は、人間を取り囲むすべてのものである。
すなわち、患者が直接影響を受ける物理的環境、他者とのコミュニケーション(精神的環境)や、患者の環境に影響を及ぼす社会やシステム(社会的環境)など広範囲に及ぶものである。
とくに、物理的環境(空気、暖かさ、騒音、日光、清潔)に焦点をあてている。物理的環境が整えば、患者の精神的、社会的側面も同時に整えられると考えている。
これらのものが、人間の健康状態に関係しているととらえたのである。
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3健康
ナイチンゲールは、健康についてとくに定義していない。しかし、病気について看護の視点から2つについて詳しく述べている。
まず1つ、「病気とは、修復過程である」と、とらえている。すべての病気は、その経過中のどの時期にあっても程度の差はあれ、性質は修復過程であるという指摘である。
もう1つは、「病気とは、毒され(poisoning)、衰弱(decay)する過程を治療しようとする自然の働きである」と、とらえている。しかも、それはずっと以前から始まって進行しており、結果として現れたのが病気であるという指摘である。
つまり病気とは、人間が環境からさまざまな悪影響を受け、同時に身体のなかに起きる衰えに対して、自然によって定められた修復過程であるととらえることができるのである。
健康は、人間のもつ力を最大限に発揮できるようにし、よい状態を保持することである。そのためには、人間のまわりにある環境要因を調整し、病気を予防することによって実現が可能である。
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4看護
看護とは、「生命力の消耗を最小にするように、修復過程を整えること」であると記述している(1859)。すなわち、その人のできるかぎりよい環境を整えることによって、対象者の修復過程を促すのである。
看護では、対象者の環境に着目し、新鮮な空気、日光、暖かさ、清潔、静けさおよび適切な食事を提供するのが目的である。
なお、看護は医学と全く異なる独立した分野であると述べている。すなわち看護とは、修復過程にある人間に焦点をあてたものであり、解剖・生理学的な視点からとらえる医学とは別の分野であるとしている。
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看護理論に基づく事例展開
ナイチンゲールと看護過程
看護過程は、ナイチンゲール理論のなかで明確に表現されてはいない。
実際、看護分野で「看護過程」が発表され発展してきたのは、ナイチンゲールがさまざまな著作を発表して数十年経過した後なのである。
しかし、彼女の理論は看護過程の要素を含んでおり、事例を展開するうえで有用である。
ナイチンゲールの理論を看護過程に活用する場合、環境が患者に及ぼす影響が焦点となる。
1アセスメント
患者をめぐる主な環境が患者に及ぼす影響をみていく。そのためにまず行うことは、患者がいま必要としているものは何かを確認することである。
確認のための患者への質問は、患者が迷わず明確な答えが出るような方法で行う。決して答えを誘導するような質問をしてはならないと述べている。
たとえば、痛みのある患者であれば「どこ」が痛いのか、「いつ」から痛むのか、「どのような」痛みなのか、と質問することである。
2つ目は、患者の心身の健康に環境が及ぼす影響を十分に観察することである。たとえば、日光、騒音、臭気や清潔などが患者にどのように影響するのかである。
2看護診断
重要なことは、環境問題を扱うのではなく、あくまでも環境に対する患者の反応をみていく。
診断内容は、いかに環境が患者の健康と安楽に重要であるかを示すものである。
3計画
患者が安全・安楽で、自然が働きかけやすいよい状態にするために必要な看護を計画する。
つまり、病気に反応する患者の能力を高めるために、環境を調整することである。
4実施
患者に影響する環境の調整をはかる行動である。
環境の要素(空気、日光、騒音、清潔、寝具など)が患者にうまく働くようによい状態におくための行動をするのである。
5評価
患者をめぐる環境を変化させることによって、最少のエネルギーで健康を修復できるようになったか否か評価する。
看護実践に対する患者の反応は、綿密な観察によってはじめて可能になるのである。
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交通事故でICUに入院したAさんの事例
Aさん、20歳、女性。食品関係会社社員。
2年前地方の高校を卒業後上京して、アパートで一人暮らし。
出勤のため乗用車運転中、誤ってガードレールに接触した。救急車で来院し、大きな外傷はないが、打撲傷が認められる。骨折は認められない。意識はあるものの、時間や場所に関する見当識障害がある。その後、ICUに入院になる。
2日目、頭痛、嘔気などの症状も認められず、経過も順調であった。見当識も改善された。一般病棟に転室が予定されていた。ところが3日目の早朝、混乱状態に陥った。いわゆるICU症候群である。
1アセスメント
まず、Aさんに環境要因の影響を確認する。光と騒音が悪影響を及ぼしていることがうかがえる。
次に、患者の心身の状態から、いま患者がとくに必要としているものがあるようにうかがえる。
同時に、データの不足がある。Aさんの日常生活状態、仕事や友人関係、家族関係などである。不足しているものは、できるだけ早く収集する。
2看護診断:「ICUの光と騒音による睡眠障害」
ICUは、重症患者を24時間にわたって観察、治療、看護を行う場である。
その必要性から、点灯され、さまざまな機械音や物理的な物音、医療者の声や彼らの立てる物音など、騒音が溢れる環境でもある。
日常性とは異なる光(点灯)と物音(騒音)は、患者にとって重要な症状をひき起こしかねない。
その1つは睡眠障害である。人間にとって眠れないことは、心身状態に悪影響を及ぼし、患者の生命力を消耗させる結果につながっていく。
この点に注目し、上記の診断がされた。
3計画・実施
(1) 一般病棟に転室し、日常の生活に戻れるように環境を調整する。日常の生活パターンをとり戻せるように工夫する。
- 昼間は目覚めさせ、夜間に眠れるようにする。とくに夜間の騒音を少なくする。
- 自然や日光に親しめるように、病室、ベッド位置を考える。
- 適度な散歩も入れる。
- テレビや好きな音楽を楽しめるようにする。
(2) 一般状態の観察
(3) 面会の機会をつくる。家族、友人、会社関係者との面会の場をつくり、患者の気持ちの安定に努める。
以上、今回の事例では、環境、とくに光と騒音を調整し、患者の自然治癒力を高めるように援助する。
4評価
実施した内容を評価していく。
- 一般病棟で2日目、Aさんは混乱状態が改善された。
- 夜間の睡眠も良好、日昼は散歩にも出るようになった。
- ようやくAさんの入院前の日常生活に近いものになり、心の安定を取り戻した。
環境がいかに人間に及ぼす影響が大きいかを示す事例である。
フローレンス・ナイチンゲール(Florence Nightingale、1820〜1910)は、イギリスが最も繁栄したビクトリア期を生きた女性である。
彼女は、両親が長期にわたって海外旅行をしている途中に、イタリアのフィレンツェで誕生した。
上流階級の次女として、いつくしみ深い家庭で育った。両親からは、ラテン語をはじめとする語学、数学、天文学などの高度な教育を受けている。
このような教育を受けることは、当時の女性としては異例のことだった。
やがてナイチンゲールは、高い教養を身につけた、思慮深い淑女に成長していった。そして、看護活動を通して管理者や看護教育者として活躍し、多彩な才能を発揮した偉大な女性である。
ナイチンゲールの90年の生涯は、活動に合わせて大づかみに3期に分けて考えることができる。
幼少期
幼少期から、姉と比べて自立心の旺盛な子どもであった。
それを示す絵やエピソードが残されている。伝記などにも様子が詳しく書かれている。
クリミア戦争を中心とした活動
1853年に始まったクリミア戦争に、翌年38人からなる看護団を組織して戦地スクタリに向かった。
クリミアにおける彼女の活動によって、いわゆる「クリミアの天使」や「ランプを持てる婦人」などと称されるに至る。
クリミアでは、数多くの活躍があり、その成果には目をみはるものがある。
特筆すべきことは、英国軍の死亡率を激減させたことである。
軍人が傷病兵の看護管理をしていた頃、死亡率が42.7%であったものが、ナイチンゲールが赴任した6か月後は2.2%に減少したといわれている。
彼女の看護管理は、データの収集や統計作成など、科学的な裏づけがなされていた。統計を用いた看護の管理方法は、ナイチンゲールが最初だといわれている。
死亡率の減少は、病院全体を徹底的に清潔にし、兵士たちの生活環境を大改革したことによる。
たとえば、病室の清掃を行い、十分に換気し、温かい飲み物と食事を与えるなど、病気や怪我による兵士の生活を整えることを行ったのである。
また、この兵士たちに対する看護活動は、兵士を1人の人間としてかかわることでもあった。
クリミア戦争後の看護活動
1860年、セント・トーマス病院内にナイチンゲール看護学校を創設した。
著述活動
150あまりの著作(単行本、論文、説明書など)と、多くの手紙(書簡)があるとされている。
代表的なものとしては、
1858年『Notes on Hospitals』(『病院覚え書』)
1859年『Notes on Nursing-What it is and what it is not-』(『看護覚え書』)
などがある。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 実践に生かす看護理論19 第2版』 編著/城ヶ端初子/2018年11月刊行/ サイオ出版