看護理論とは
『新訂版 実践に生かす看護理論19 第2版』(サイオ出版)より転載。
今回は看護理論の総論について解説します。
城ヶ端初子
聖泉大学大学院看護学研究科 教授
看護理論とは
アメリカでは、看護理論についてさまざまな定義がなされている。たとえば、メレイス(A.I.Meleis)は看護理論には3種の定義づけがあるとして、看護理論の構造に焦点をあてた構造的定義、実証による研究的定義、および目的のための機能的な定義をあげている。
構造的な定義づけとして、トレス(G.Torres)は「概念を定義づけ関連させ合う1つの方法」と述べている。
また、スティーブンス(K.R.Stevens)は、看護理論とは「看護という事象について記述し説明するもの」として、機能的な定義を述べている。
ここでは、看護理論を「看護という事象について記述し説明し、またある現象がほかの現象に与える影響を予測しようとするもの」ととらえることにしたい。
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看護理論の範囲
1960年代、1970年代に開発された看護理論は、看護を広い範囲で定義づけている。
そして、看護が果たすべき社会的目的や、その目的を実現するために看護がなすべき役割を明らかにしている。
1 広範囲理論
看護の全領域にわたる広い範囲の理論である。一般理論ともよばれる。
健康と病気に焦点をあてた、ドロセア・E.オレム(Dorothea E.Orem)や、シスター・カリスタ・ロイ(Sister Callista Roy)、マーサ・E.ロジャーズ(Martha E.Rogers)の理論などがこれに該当する。
2 中範囲理論
冠状動脈疾患患者のケアや、リハビリテーション患者のケアなど、看護の各領域や専門性を扱う理論である。看護実践につながる理論で、具体性を含むので抽象性が低い。
これにあてはまるのは、マデリン・M.レイニンガー(Madeleine M.Leininger)、ローズマリー・リゾ・パースイ(Rosemarie Rizzo Parse)、マーガレット・A.ニューマン(Margaret A.Newman)などの理論である。
3 小範囲理論
疼痛や悲嘆、不安など特定の看護問題を扱った理論である。実践理論ともよばれる。範囲の狭い理論で、目標と達成に必要な行為という具体的なものが対象になる。
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看護におけるメタパラダイム(4つの概念)
看護におけるメタパラダイム(metaparadigm)は、4つの概念、すなわち、1人間、2環境、3健康、4看護、から成り立っている。
メタパラダイムとは、ある学問あるいは専門職を体系化するための概念的な枠組みのことである。
1人間とは、看護の受け手で、身体的・精神的・心理的・社会的な存在である。
2環境とは、その人を取り巻く状況と、その人に及ぶあらゆる影響を指している。
3健康とは、人間が体験する、体調のよい、あるいは悪い状態の程度を指している。
4看護とは、看護を提供する人を指している。
このメタパラダイムの4つの概念をいかに記述し、説明されているかの観点から分類すると次のようになる。
1 システム理論およびモデル
人間を開放システムととらえる。このシステムは環境からの入力(インプット)を受けて処理し、環境へ出力(アウトプット)し、フィードバックする仕組みである。
ロイ、レイニンガー、ベティ・ニューマン(Betty Neuman)などの理論が該当する。
2 相互作用の理論およびモデル
人間と人間の関係を基礎としている。人間のニードを満たすためのコミュニケーション過程に焦点をあてるものである。
ヒルデガード・E.ペプロウ(Hildegard E.Peplau)、アイダ・ジーン・オーランド(Ida Jean Orlando)、アーネスティン・ウィーデンバック(Ernestine Wiedenbach)、アイモジン・M.キング(Imogene M.King)などの理論が該当する。
3 ニーズ、問題志向の理論およびモデル
人間のもつニーズや問題に焦点をあて、看護過程を展開しながら、ニードの充足や問題を軽減することをめざすものである。
フローレンス・ナイチンゲール(Florence Nightingale)、フェイ・グレン・アブデラ(Faye Glenn Abdellah)、ヴァージニア・ヘンダーソン(Virginia Henderson)、オレムなどの理論が該当する。
4 エネルギー分野理論およびモデル
人間をエネルギー分野としてとらえ、環境や宇宙と絶えず相互作用しているとするものである。
ロジャーズ、パースイなどの理論が該当する。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 実践に生かす看護理論19 第2版』 編著/城ヶ端初子/2018年11月刊行/ サイオ出版