報告時、いつも医師に「何を言っているのかわからない」と言われる。どうすれば伝わる?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は医師への報告が伝えやすくなるポイントについて解説します。
小越優子
滋賀医科大学医学部附属病院 看護部管理室看護師長/救急看護認定看護師
報告時、いつも医師に「何を言っているのかわからない」と言われる。どうすれば伝わる?
①最も伝えたいこと(症状など)、②医師にしてほしいこと(診察依頼など)、③補足情報(バイタルサインなど)の順に報告すると、伝わりやすいです。
医師への報告の方法として、I-SBAR-C(SBAR/エスバー)があります。SBARを使うと、医師に報告する内容が、より明確になるため、有用です。
しかし、急変時など限られた時間内での報告では、省略が必要となる場合もあります。
結論から先に伝える
医師に行動を起こさせるために何を報告するかを考えるのがポイントです(図1)。
まず「緊急度が高いとわかる症状」を一番に伝えるのが効果的です。そのためには、医師に伝えたい情報を、日ごろから整理しておくことが大切です。整理した情報のなかで最も伝えたいことを一番に報告することで、医師に、何を報告したいのかが伝わりやすくなります。
その後に、一番に報告内容の理由が伝えられれば、さらに効果的です。
伝えた情報の追加として、経過やバイタルサインを伝えることも重要です。
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医師にも焦りはある
状況によって度合いは異なりますが、報告時、私たち看護師は焦っています。そのため、よけいに「報告が苦手…」と思いがちです。
しかし、報告を受ける医師にも焦りがあることを、私たち看護師は理解しておく必要があります。
1 当直医にとっては「知らない患者」であることを忘れない
医師は、自分が担当している患者だけでなく、当直時などには担当外の患者についても状態変化の報告を受けなければならないため、緊張する状況下に置かれています。そのことを理解し、一番伝えたいことを伝えて緊急性の度合いを理解してもらってから、医師にどうしてもらいたいのか、具体的に伝えましょう。
主治医以外に報告する場合には、必要となる患者の補足情報を伝えると、より効果的な報告となります。
2 成功体験を積み重ねる
また、「苦手」という意識は、うまくいった体験を重ねると解消されていきます。ドクターコールに限らず、リーダー看護師への報告や申し送りの際など、限られた時間内で相手にわかりやすく簡潔に伝えるよう意識して訓練するとよいでしょう。
自分が報告で述べたことを紙に記入し、実践後に振り返りを行うと、報告すべき内容を明確に伝える訓練となり、報告方法は上達していきます。
●担当外の患者の状況変化に関するコールを受ける際、当直医は「自分は、何を求められているのか?」を考えているといいます。逆説的に考えると、看護師は「医師に、何をしてほしいか?」を伝えればよい、ということです。
●「◯◯してもらえませんか?」とダイレクトに伝えづらいなら、「△△ではないかと思うのですが…」と自分のアセスメントを伝え、医師が評価しやすくするのも1つの方法といえるでしょう。
急変対応の究極の目的は 「予測できる急変は、起こさない」 こと
BLSやALSなど、「起こってしまった急変への対応」の正しいスキルを身につけることは、もちろん大切です。
でも、ちょっと待ってください。患者にとって最良なのは、「急変が起こらないこと」ではないでしょうか?
急変の数時間前に、患者は何らかのサインを発している、とされています。その段階で「何か変だ」と気づいて介入していれば、患者は急変せずに済んだかもしれないのです。
急変は、医療者にとっても嫌な体験ですが、患者にとっても嫌なものです。回復が遅れ、入院期間が長引くことは、患者にとって、大きな不利益となるのです。そのことを常に念頭に置くことが、これからの急変対応には不可欠となります。
そのためには、患者に関心をもつことが、最も重要です。「時間がないから…」といって、呼吸数の測定を省略してしまっては、いけません。呼吸数は、「みる」だけで得られる重要な情報です。できれば1分間実測しましょう。
また、ヒトは、どうしても、先入観をもちます。また「見たくないものが視界に入らない」状況にも陥りがちです。そのため、「◯◯に該当する状況があったら、ドクターコールする」などという取り決めを、医師・看護師で設定し、共有しておくなどの工夫も大切です。
(道又元裕)
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社