「死戦期呼吸」って、どんなもの?一目で見抜ける?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は死戦期呼吸について解説します。
林 晶子
杏林大学医学部付属病院 高度救命救急センター/救急看護認定看護師
「死戦期呼吸」って、どんなもの?一目で見抜ける?
心停止間近あるいは心停止後数分に生じる、あえぐような呼吸です。一見「呼吸がある」ようにみえますが、よくみると胸郭が動いていないのが特徴です。
死戦期呼吸は、あえぎ呼吸、下顎呼吸ともいわれる呼吸中枢機能の消失による異常な呼吸パターンです。「心停止=死戦期呼吸」とは言い切れませんが、死期が近い患者にみられます。
死戦期呼吸の場合、肺には、ほぼ空気が届きません。その結果、換気障害により低酸素・二酸化炭素の貯留が進み、確実に死に至ります。
死戦期呼吸の見抜きかた
死戦期呼吸は、注意深く看れば、見抜けます。しかし、何か変だと感じても「呼吸しているようにみえる」ため、対応が遅れてしまう可能性があります。見きわめのポイントは、以下の5つです。
①開口したまま深い努力様呼吸をするが、胸郭の上下運動がない
②吸気は不規則
③毎分数回以下の徐呼吸
④呼吸休止時間が長く、呼吸休止時間は徐々に延長する
⑤「口をパクパクしている」「下顎だけ前に出している」「頭を前後に動かしている」ようにみえる
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死戦期呼吸への対応
死戦期呼吸の場合、有効な換気がなされていません。心停止の兆候の1つととらえられるため、ただちにBLS(一次救命処置)を開始しましょう。
脈が触れる場合であっても、死戦期呼吸が出ている以上、SpO2低下や徐脈、そして、いつ心停止になってもおかしくない状態です。気道確保・バッグバルブマスクによる補助換気を行い、医師への報告、モニタ装着・バイタルサイン測定、人的余裕があれば気管挿管準備などを行います。
患者が看取りの方針の場合は、低酸素や苦痛に対する治療をしながら、家族と最期の時間を過ごせるような環境を整えましょう。患者の呼吸は苦しそうにみえるので、家族へ説明して寄り添います。
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社