トイレで患者が急変!ベッドに戻してから対応する?それともトイレで対応する?

『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はトイレで患者が急変した際の対応について解説します。

 

露木菜緒
Critical Care Research Institute(CCRI)/集中ケア認定看護師

 

トイレで患者が急変!ベッドに戻してから対応する?それともトイレで対応する?

 

狭い個室では、観察も対応も十分にはできません。
応援を呼び、廊下まで患者を運び出してから、対応を開始します。

 

 

トイレという狭いスペースで急変が生じた場合、患者がどのような状態なのか把握することが困難です。また、心肺停止時などに行う蘇生処置も、狭いスペースでは実施できません。そのため、すみやかにトイレから患者を救出し、廊下まで運び出す必要があります。

 

なお、個室のドアの鍵の種類は、事前に把握しておきましょう。コインなどを用いて外側から開けられるものや、合鍵が必要なものなど、開錠方法が異なるためです(図1)。鍵の種類と保管場所を把握しておくことは、急変対応の隠れた最重要ポイントです。

 

図1 個室の外から鍵を開ける方法(例)

個室の外から鍵を開ける方法(例)

 

対応の実際

1 声をかけ、意識の有無を確認する

個室のドアの外から患者に声をかけ、意識の有無を確認します。

 

返答がない(もしくはおかしい)と感じたら、羞恥心に配慮しながらドアを開けます。意識清明でなければ、この時点で応援要請し、搬送準備(ストレッチャーなど)を依頼します。

 

2 呼吸・循環の確認と状況判断をする

胸郭の挙上などを観察して呼吸の有無を確認するとともに、橈骨動脈や頸動脈に触れて循環の有無を確認します。

 

同時に、患者がどのような位置に、どのように倒れているかなど、状況の確認も行います(図2)。

 

図2 状況判断の方法

状況判断の方法

 

3 患者をトイレから廊下に運び出す

個室のドアが内開き(内側に開くタイプ)だと、ドアを十分に開けられない場合もあります。その際は、患者をいったん便器に座らせて、ドアを開くスペースを確保します(図3‐A)。

 

図3‐A 患者の救出方法(便器に座らせる方法)

患者の救出方法(便器に座らせる方法)

 

個室が狭ければ、引きずり法1)で患者をトイレの外に運び出します(図3‐B)。

 

図3‐B 患者の救出方法(引きずり法)

患者の救出方法(引きずり法)

 

ワンポイント

●まずは患者の腕を組ませるのがポイントです。

 

●患者の脇の下から看護師が腕を差し込み、患者の手首を持って引き寄せるようにして移動します。

 

4 心肺停止であれば心肺蘇生、心肺停止でなければ全身観察を行う

心肺停止時は一刻も早く蘇生を開始しなければなりません。そのため、患者をトイレから運び出したら、すぐに廊下胸骨圧迫を開始します。

 

心肺停止でなければ、外傷の有無、便器内外の吐下血の有無などを観察します。動脈性の出血などを認める場合は、圧迫止血を実施します。

 

その後、人手が確保できたらストレッチャーなどに乗せ、病室へ移動します。

 

 

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引用・参考文献

1)苑田裕樹:狭い空間(トイレなど)でぐったりして倒れている.三上剛人 監修,異変発生!ナースならできておくべき すぐ,やる技術 カード付き.学研メディカル秀潤社,東京,2014:60‐61.


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社

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