低血糖で意識レベル低下。血糖測定、意識レベル確認のほかに、何をする?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は低血糖で意識レベルが低下した患者への対応について解説します。
村上香織
近畿大学病院 救命救急センター 看護長/急性・重症患者看護専門看護師/救急看護認定看護師
低血糖で意識レベル低下。血糖測定、意識レベル確認のほかに、何をする?
すみやかにブドウ糖投与を行った後、意識レベルや低血糖症状の変化を観察・評価しながら血糖値の再検査を行いましょう。
血糖値70mg/dL以下を低血糖といいます。
軽度の低血糖では空腹感を認め、さらに血糖値が低下するとカテコールアミンが分泌されるため、動悸や冷汗が生じます。
血糖値50mg/dL以下になると中枢神経症状(意識レベルの低下など)が出現し、血糖値30mg/dL以下になると意識消失することもあります。
そのため、意識レベルの評価とともに、冷汗や手足の冷感、振戦、頻脈、顔面蒼白、けいれんの有無などの低血糖症状の観察をする必要があります(表1)。
ブドウ糖投与は必須
低血糖は、カテコールアミンを過剰分泌させて心疾患(致死的不整脈や狭心症など)を誘発し、脳障害(けいれんや意識消失、昏睡など)をきたすことから、すみやかな対応が必要です。医師に報告し、ブドウ糖投与を開始します。
意識レベルが低下している場合は、経口摂取困難な場合が多いため、50%グルコースを20mL以上(20%グルコースなら40mL)静脈投与し、15~20分後に簡易式血糖測定器で血糖値の再検査を行います。
経口摂取が可能な場合は、ブドウ糖10g(またはブドウ糖を含む飲料水を200mL)を摂取してもらいます。砂糖(ブドウ糖と果糖を1:1で含む)で代用する場合は20g摂取してもらえばかまいません。ただし、α‐グルコシダーゼ阻害薬*1服用中の患者では、砂糖の効果発現が遅延するため、ブドウ糖摂取で対応してください。
なお、経口摂取の場合、約15分経過しても低血糖が持続する場合は、再度同一量を摂取してもらいます。
血糖値の再検査の結果を受けて、グルコースの静脈注射や糖質の経口摂取を行いますが、低血糖の遷延がみられた場合は、ブドウ糖を含む輸液の継続投与が必要です。
低血糖改善のための糖質投与を行いながら、低血糖の要因となりうる情報(食事量や運動量、インスリン療法の状況など)を得て、治療や再発予防に努めましょう。
低血糖が生じうる患者の場合は、事前指示を医師にもらっておくとよいでしょう。
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引用・参考文献
1)日本糖尿病学会 編:糖尿病治療ガイド2018‐2019.文光堂,東京,2018.
2)川原千香子 編:事例に学ぶ緊急時の初期対応 Q&A.総合医学社,東京,2010:200‐201.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社