医師の指示がなくても、看護師の判断でAEDを使っていいの?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は看護師判断でのAED使用の是非について解説します。
古堅 健
中頭病院 救急診療部 主任/救急看護認定看護師
医師の指示がなくても、看護師の判断でAEDを使っていいの?
看護師の判断でAEDを使用しても、問題ありません。
医師の包括的指示があると、よりよいでしょう。
看護師は、医師の包括的指示のもとで医行為を行うものと法的に位置づけられています。なかでも、侵襲性の高い除細動は、医師のみが行うと慣習的に認知されてきました。では、医師の包括的指示がないとAED(自動体外式除細動器)は使えないのでしょうか?
VF(心室細動)やpVT(無脈性心室頻拍)によるCPA(心肺停止)に対しては、早期除細動の有効性が、科学的に立証されていますから、看護師もAEDを迅速に使用すべきです。
ここで、法的視点から考えてみましょう。
AEDは「臨時応急の手当」
医師の包括的指示があれば、看護師がAEDを使用しても、医師法第17条または保健師助産師看護師法第37条により、法的な問題はありません(表1)。
では、医師の包括的指示がない場合はどうでしょう?
保健師助産師看護師法第37条では包括的指示がない場合「医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をする場合はこの限りではない」とされています。
つまり、AEDは、医師の診療を受けるまで患者を放置すると患者の身体に重大な危害が生じる恐れがあるときに行う必要最小限の処置、すなわち臨時応急の手当と考えられるため、看護師は自らの判断でAEDを使用できるのです。
もちろん、可能なら包括的指示のもとで実施するのが理想ですから、皆さんの施設でもAED使用時の包括的指示を明文化しておくとよいでしょう(表2)。
ちなみに、現在、医療者がすみやかに対応できない場合では、一般市民がAEDを用いても医師法違反とはなりません。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社