胸骨圧迫の強さと速さ、どうすれば一定に保てる?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は胸骨圧迫の強さと速さを一定に保つ方法について解説します。
中野英代
佐賀大学医学部附属病院 看護部/救急看護認定看護師
胸骨圧迫の強さと速さ、どうすれば一定に保てる?
速さ(テンポ)は目視で確認できますが、強さ(深さ)はわかりにくいです。浅くなりすぎないように意識しましょう。
AEDのフィードバック機能を活用する方法もあります。
適切な強さと速さ
1 成人の場合、強さ(深さ)は「5cm以上で6cmを超えない程度」
AHA蘇生ガイドライン2010(G2010)1)では「胸骨を少なくとも5cmの深さで圧迫」とされていましたが、AHA蘇生ガイドライン2015(G2015)2)では「5cm以上の深さまで圧迫すべきだが、過度に深く(6cm超)ならないようにする」と変更されています(表1)。
表1 胸骨圧迫の強さと速さ(AHA蘇生ガイドライン2015)
変更の理由は、以下の2点です。
- 1約9,000名の院外心停止患者を対象として胸骨圧迫の深さ(平均値)と生存率などを比較すると約4.6cmが最適の深さであったという研究がある
- 2圧迫の深さが6cmを超えると肋骨骨折や胸骨骨折などの発生率が高まりうる
2 成人の場合、速さ(テンポ)は「100~120回/分」
G20101)では「少なくとも100回/分」とされていましたが、G20152)で「100~120回/分」と変更されています。変更の理由は、以下の2点です。
- 1テンポが低下すると自己心拍再開率が有意に激減する
- 2テンポが速いと冠動脈血流が減少しうる
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強さの評価は難しい
胸骨圧迫の質は、目視での観察によって評価できます。しかし、目視での評価には限界があります。G20152)でも「フィードバック器具(AED付属の加速度センサや圧力感知パッド)を用いず胸骨圧迫の深さを評価するのは困難」とされています。
最近のAEDは、内蔵されたフィードバック器具で実施状況をリアルタイムに測定し、胸骨圧迫の質を評価する機能がついているものが多いです。病棟や外来で自分が使う可能性のあるAEDの機能を確認しておきましょう。
なお、フィードバック器具を用いて胸骨圧迫を評価すると「深すぎる場合より浅すぎる場合が多い」といわれています。胸骨圧迫実施時は、浅くなりすぎないよう意識することが大切です。
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引用・参考文献
1)American Heart Association:BLSヘルスケアプロバイダー受講者マニュアル AHAガイドライン2010準拠.シナジー,東京,2011:10.
2)American Heart Association:心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン アップデート2015ハイライト.[2018.7.2アクセス].
3)畑中哲生:救急蘇生のガイドライン2015.救急救命 2016;18(2):16-19.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社