胎児の産道通過機序|児の回旋のメカニズム③
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は胎児の回旋メカニズムに基づいて、胎児がどのように産道を通過していくかについて解説します。
藤本 薫
保健医療技術学部看護学科教授
胎児の産道通過機序
骨盤入口への進入前
分娩に際し、児先進部は骨産道に進入していく。その進入の程度によってその状態を以下のようにいう。
・浮動(floating):児頭がまだ骨盤入口に進入せず浮動している状態(図1)。
・固定(dipping):児頭の一部が骨盤入口に進入しているが、最大径がまだ骨盤入口を通過していない状態。
・嵌入(かんにゅう/engagement):児頭の最大径が骨盤入口を通過した状態。
第1回旋(図2)
第1回旋は横軸回旋(胎勢回旋)である。骨盤入口では、児頭の矢状縫合(しじょうほうごう)が骨盤入口の横径に一致、大泉門と小泉門の高さは同じである。
陣痛が開始すると児頭は前屈し、頤(おとがい)部が胸部に接近して児頭の小泉門が下降する。
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第2回旋(図3)
第2回旋は縦軸回旋(胎向回旋)である。児頭が骨盤内に下降すると小泉門は母体の側方から前方へ、大泉門は後方に向かって回旋する。
矢状縫合は骨盤濶部では斜径に、骨盤峡部あるいは出口部では前後径に一致し、骨盤峡部以下では小泉門が恥骨結合に向かうように回旋する。
第3回旋(図4)
第3回旋は横軸回旋(胎勢回旋)、伸展運動である。児頭が陰門を通過する際に後頭部は恥骨弓下(ちこつきゅうか)に現れ、頭部は恥骨結合下縁に支えられる。
頤部は胸部から離れ、児頭は反屈伸展し、前頭部が産道後壁を前進する。後頭部、前頭部、顔面の順に外陰部より娩出される。
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第4回旋(図5)
第4回旋は縦軸回旋(外回旋)である。児頭の娩出に続き肩甲が回旋し、下降する。
児頭娩出直後、胎児の顔面は母体の後方を向いているが、肩甲の回旋に伴って母体大腿の内面を向く。これは児頭娩出後、母体の股間で行われる外回旋である。
肩甲娩出
前方の肩甲が娩出する(図6)。
後方の肩甲が娩出する(図7)。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版