膵臓の解剖生理
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回は膵臓の解剖生理について解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
膵臓の構造と働き
膵臓は、胃の後ろにある長さ15cm程度の臓器で、十二指腸側から膵頭部、膵体部、膵尾部と呼んでいます(図1)。
また、膵臓には、消化液である膵液を分泌する外分泌機能とホルモンを分泌する内分泌機能があります。
❶外分泌機能
膵臓では、1日に800〜1000mLにも及ぶ膵液が分泌され、その分泌量は必要に応じて調整されています。
膵液には、タンパク質分解酵素(トリプシン)、脂肪分解酵素(リパーゼ)、糖質分解酵素(アミラーゼ)など、多数の消化酵素が含まれています。また、膵液はアルカリ性であり、胃酸で酸性になった食べ物を中和する働きもあります。
胆管で肝臓や胆嚢とつながっており、生成された膵液は十二指腸乳頭を経て小腸に送り込まれます。
❷内分泌機能
膵体部と膵尾部に多く存在するランゲルハンス島という細胞群によって血糖コントロールが行われています。
ランゲルハンス島を構成する細胞にはα細胞、β細胞、δ細胞があり、それぞれ血糖や消化作用のコントロールに必要なホルモンを分泌しています(表1)。
ここで少し、ソマトスタチンの類似物質の話をします。
腸閉塞対策の最後の手段「サンドスタチン®」
腸閉塞の治療は閉塞の原因を解除するのが原則ですが、それが難しい場合にはどうしたらよいでしょうか?
よくある状況としては、腹膜播種による閉塞部位が複数あって手術もできないような場合です。
分泌された消化液は後ろにも前にも進めず、腸はパンパンに膨らみ、なんとか中身を外に出そうと腸が頑張って動いてしまうことでさらに痛みが出て…でも手術はできず、イレウス管も届かない…なにか打つ手はないのか?!…そこで出番となるのが、「サンドスタチン®」。ソマトスタチンの類似物質です。
上の表にもありますが、ソマトスタチンは代表的なブレーキホルモンです。視床下部などからも分泌されたりしていて、厳密には一部例外もありますが、総じて「消化作業頑張れホルモン」たちを“抑制”する働きがあります。
消化作業には多くのホルモンが関係しています。食べ物の流れに並行し、ドミノ倒しのようにいろんなホルモンが順番に刺激・分泌され、消化液を分泌したり、消化管を動かしたりと消化活動を活性化していきます。
しかし、サンドスタチン®を投与すると、これらを大きく抑制することになります。結果、消化液の分泌が減り、腸の動きが弱くなり…冒頭に挙げたような場合には苦痛の緩和に大きく寄与することになるのです。
緩和の段階では、サンドスタチン®の持続皮下注を続けながら在宅療養される患者さんもいるよ。
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【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂