肝臓の解剖生理
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回は肝臓の解剖生理について解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
肝臓の構造と働き
肝臓は右横隔膜の下に位置し、解剖学的には肝鎌状間膜を境に右葉と左葉に分かれています。
肝臓には肝動脈と門脈の2つの血管から栄養が運ばれ、肝静脈を経て、肝外へ流出します。また、手術などで切除しても再生する唯一の臓器でもあります。
手術をするうえで、肝臓は8つの領域に区分けされています(図1)が、肝臓の血管の走行はとにかく複雑!(図2)
また、大きな門脈が通っているので、肝臓は“血流が豊富な消化器=術後出血には要注意”ってことを覚えておきましょう。
また、この血流がなんらかの理由で阻害された場合は、壊死を起こし細菌感染を起こす可能性もあります。
肝臓の仕事はたくさんあります。
・栄養分の貯蔵・調整作用
・解毒作用
・胆汁の生成
ここではとくに、肝臓の術後ケアの理解に必要な、胆汁の生成を中心に勉強していきましょう。
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胆汁の生成
胆汁は消化液のひとつです。脂肪を乳化して脂肪の消化吸収を助ける働きがあります。
ですが、胆汁そのものには消化酵素は含まれておらず、あくまで消化を助ける作用がメインとなります。肝臓でつくられた胆汁は、総胆管から胆嚢へ流れ、ファーター膨大部の手前で膵管と合流し、十二指腸乳頭を経て十二指腸へ流出します(図3)。
胆汁の主要な成分はビリルビンで、その材料をさかのぼると赤血球にたどり着きます。寿命を終えて脾臓で破壊された赤血球は肝臓に運ばれ、肝臓の細胞で代謝され黄色のビリルビンに変化します(図4)。
代謝されたビリルビンは胆汁とともにいったん腸内に分泌され、ウロビリノーゲンへ還元され、再び吸収されます。ウロビリノーゲンは体内で酸化するとウロビリンに変化します。そして、ウロビリンは「ウロ」つまり尿とともに体外に排出されます。
つまり、尿の色はウロビリンの色だね!
一方、吸収されず腸内に残ったウロビリノーゲンは、ステルコビリノーゲンに還元され、これが酸化することで黄色から茶色のステルコビリンに変化します。そして、ステルコビリンは大便とともに排泄されます。
つまり、大便の色はステルコビリンの色ですね!
吸収されたり還元されたり忙しいビリルビンだけど…
これを理解していると、ビリルビン尿や白色便が出る理由が理解しやすくなるよ!
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【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂