コラム:食道の手術はなぜ「鬼門」?
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回は食道の手術について解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
食道の手術はなぜ「鬼門」?
食道ってトラブルになりやすそうな要素が満載なんですね!
食道は、首、胸、腹と広範囲にまたがっていて大変。
さらに、近くに重要な臓器や血管が密集しているから、時間のかかる大手術になりがちだよ~。
食道、特に食道癌の手術は10時間を超えることも珍しくない大手術で、術後合併症の出現頻度も他の消化器手術に比べて多い印象です。そのため、外科医だけでなく、多くの外科病棟の看護師にとっても「鬼門」とされています。
その理由のひとつが食道の解剖学的特徴。食道の周囲には呼吸器や血管・リンパ管などの重要な臓器が集まっています。さらに、食道は腸のようにうねっていることもなく、まっすぐに伸びているので長さに余裕がなく、1か所切除してしまうと再びつなぎ合わせるのはとても困難です。
そのため、 「食道の再建術」で説明したように、大きく切除したうえで胃を伸ばして吻合せざるをえないのです。
しかし、再建組織(胃管)の血流は胃の血管からのものなので、遠くなるうえ、引き伸ばされて血流が悪くなります。なので、縫合不全のリスクもそれだけ高くなります。
また、口腔内では絶えず唾液が分泌されているので、少しでも縫合不全が起きた場合には口腔内の細菌から感染し、重度の縫合不全に至ることも多いです…。
【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂