食道の解剖生理
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回は食道の解剖生理について解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
食道の構造と働き
食道の仕事は食物や唾液の運搬で、消化吸収能力はありません。長さは約25cmで、頸部食道、胸部食道、腹部食道の3つに区分されます(図1)。食道上部1/3は横紋筋で次第に平滑筋が多くなり、下部1/3は平滑筋です。
蠕動運動があり、食道内面は粘膜で覆われています。
食道は膜が1枚足りない?!
消化管は、粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜の4層からできているのが基本です。しかし、食道には漿膜がありません。なお、漿膜は腹部では(臓側)腹膜、胸部では(臓側)胸膜とよばれます。ちなみに、膜に覆われた袋状の空間が「腔」(腹腔、胸腔)です。
漿膜がある/ない、というのは、「肉を最後にラップでくるんでいるかどうか」というイメージです。たった1枚の薄い膜ですが、ラップでくるんでいなければ、肉汁が染み出てきてしまいますよね。
たとえば、腹部の癌が漿膜を破ると腹膜播種になり、胸部なら胸膜播種になります。しかし、食道にはその膜がそもそもありません…膜が1枚ないだけで、癌ができたときに非常に周囲へ浸潤しやすくなるのですね。
食道の周囲には大小さまざまな血管が走り、リンパ節も多く発達しているよ(図2)。
そして、食道を栄養する血管はいくつもあるよ。
たとえば下甲状腺動脈、気管支動脈、固有食道動脈、肋間動脈、左胃動脈、左下横隔動脈などなど…
名前を見ただけでも食道の手術で影響を受ける分野が多岐にわたることが想像できるよね!
こんなに覚えきれませーん!><
覚える必要はないの。
よ~く見ると大動脈から小さな血管がたくさん伸びているよね。
だから食道の手術はとても時間がかかるし、術後もトラブルが起こりやすいんだね。
縦隔と横隔
ここでの「隔」は、「腔を隔てる」という意味です。そこで、縦隔→二つの腔(右の胸腔と左の胸腔)を縦に隔てる組織、横隔(膜)→二つの腔(腹腔と胸腔)を横に隔てる組織(膜)となるのです。
【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂