コラム:がんとは?
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回はがんについて解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
細胞はひとつひとつが遺伝子(体全体の設計図)を持っています。細胞分裂して1つの細胞が2つになるときには、その遺伝子をまるまる1セットコピーし、2つになった細胞の両方にその遺伝子が受け渡されます。
遺伝子のコピーは機械がするわけではなく、自分たちが手作業でコピーするので、ミスが起こることもあります。そして、手作業が多ければ多いほどミスが起こる可能性は高くなります。
飲酒や喫煙、胃酸などの刺激やピロリ菌、肝炎ウイルス、HPVなどの感染によって、細胞が傷ついては治る…をくり返すことは、細胞分裂をくり返すことにほかなりません。それはつまり、遺伝子のコピー作業が増え、ミスが起こる可能性が高くなるということです。それこそが、がんのリスクの本体です。
この遺伝子のコピーミスの起こしどころが悪く、体に有害な能力を持って勝手に増殖し始めたものは「がん」と呼ばれます。逆にミスの起こしどころがよく、運良く有用な能力を獲得したら、それは「進化」になります。
長い歴史のなかで進化してきた人類と、一定の確率でがんになってしまう人類は、実は表裏一体なのですね。
なお、「がん」と「癌」は同じように見えますが、実はちょっと違います。
「がん」は悪い腫瘍全般を指していて、およそ皆さんのイメージどおりかと思います。そして「癌」は「がん」のなかでも特別に「体の外」にできたものを意味しています。医学的にいえば、癌=上皮性悪性腫瘍ということです。
上皮というのは、「体の外側を覆っている組織」のことです。胃や大腸、肺、胆管、乳管、皮膚、前立腺…「癌」、つまり上皮性悪性腫瘍ができるところはたくさんありますが、すべてミクロに見ると体の外とつながっているのです。
「縫合不全」で消化管はちくわの穴みたいのものだから体の外って教わりましたけど…胆管や乳管も体の外ですか?!
胆管→十二指腸→胃→食道→口→外乳管→乳頭→外
…ほら、つながっているでしょ?
一方で、「がん」はどこにできてもよいのです。肉腫も骨腫瘍も白血病も…なんでも含んでいます。そして、これらは「非」上皮性の悪性腫瘍です。
だから、病名に「癌」ってつかないでしょ?
白血病を「血液のがん」ってたとえることはあっても、「骨髄癌」とは絶対にいわないよね。
【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂