ストーマの術後指導
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回はストーマの術後指導について解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
術後指導のポイント
術後しばらくしてストーマの様子が落ち着いたら、そろそろ患者さんやご家族に術後指導を始めよう!
術後指導というと…
やっぱりストーマケアの装具交換が中心になりますか?
それはもちろんだけど、まずは患者さん本人・ご家族がストーマを受け入れることができるっていうのが大切だと考えているわよ。
必要なケアを必要なときに提供できる環境をできるかぎり整えた状態で家に帰ることができるのが理想。
だから、入院中からストーマケアを行って、帰る本人も受け入れるご家族も、少しでも不安を取り除いてあげたいわよね。
❶まずはストーマを見るところから
無理せずゆっくりと受け入れられるよう、ストーマが怖いものではないということを理解してもらいましょう。起き上がれるようになったら、少しずつストーマを見てもらうことから始めます。見ることができたら触る→洗ってみる、と段階を重ねて指導していきましょう。
患者さん本人によるケアが難しい場合には、ご家族が面会に来るときにストーマケアを行う様子などを見てもらいましょう。
難しい言葉は使わずに簡単な言葉づかいを心がけてね ♪
❷ご家族にもケアに参加してもらう
最初はベッドの上でのケアから行いますが、この段階で積極的にご家族にケアに参加してもらってください。
なぜですか?
本人がケアを行う場合でも、本人の具合が悪くて動けなくなったらご家族がケアを行う機会が増えるから。
ケアが行えないくらい具合が悪いということは、横になった状態でケアをしなきゃいけない事態も想定できるからね。
「誰でもケアを行えるようにしておく」ことも退院への準備なのよ。
あと、たとえば、院内では水分の拭きとりなどにガーゼを使うことが多いけど、毎日のケアのためにわざわざ医療用ガーゼを「使わなければいけない」と思ってしまう患者さんやご家族もいるんだよね。
でも、医療用のものは経済的な負担になったり、購入できるところが限られるなどの制限もあるよね。拭きとり用のガーゼも、軟らかく吸水性のよいキッチンペーパーなどで代用できるよ。
このように、具体的に代用できるものを提示しつつ、「家にあるもので代用できるよ」とお話をしながらケア指導をしてね。
❸ケアの方法を指導する
・ドレーンなどが抜けてシャワー浴の許可が出たら、シャワーをしながらのケアの方法を指導しましょう。
シャワーをしながらのケアの流れ
①装具を剥離する
② シャワーを浴びながらストーマ周囲を泡でやさしく洗浄する
③ストーマ周囲の泡をシャワーでしっかり洗い流す
④ 終わったらガーゼやキッチンペーパー等でやさしく水分を拭きとる
⑤ ストーマの下縁に合わせて上に向かってかぶせるように装具を装着する
ケアの手順は「ストーマケアの手順」も参照してね!
❹便破棄の方法を指導する
便は下記の手順で破棄するように指導しましょう。
便破棄の流れ
①トイレに座った状態でストーマ袋の排出口を上に向け、口を開ける。
② 足の間に口を落とし、便を払う。便が出にくければストーマ袋を絞るように便を出す(下に引っ張ると面板が剥がれることがあるので注意!)。
③ 排出口から5cm程度をティッシュで拭い、口を閉じる。このとき排出口から空気を少し入れるようにする(ストーマ袋内が真空状態になって袋がくっつくと、ストーマ袋上部に便が溜まってフィルターの目詰まりを起こしやすいため)。
なお、ストーマ袋の排出口(便破棄口)にはいくつか種類があります(巻きあげてマジックテープやクリップ、輪ゴムで留めるものや、イレオストミーの場合はキャップで留めるだけのものなど)。排出口に便が付着していると、においの原因にもなるので、ていねいに拭きとれるよう援助を行いながら指導してください。
❺食事について
基本的に食べられないものはありませんが、どんな食べ物も健康のためには適量が基本です。ただし、食べると便のにおいが強くなる食材があります(ニンニクやタマネギなどのにおいの強いものや肉やチーズなどの動物性タンパク質など)。また、ヨーグルトは腸内細菌を整える作用があるのでおすすめです。
ストーマ造設後は、これまで大腸で行われていた水分調節がうまくいかなくなることがあるので、便秘をしないよう水分をしっかりとるよう指導しましょう。イレオストミーでも、小腸での水分吸収は十分ではないので、しっかりと水分補給をすることが必要です。
飲酒も可能です。しかし、飲みすぎは体によくありません。アルコールはかゆみや水様便の要因にもなります。また、ビールなどの炭酸を含むものはガスが多くなるので、自覚してもらいましょう。
どんなに「健康によい」といわれる食べ物でも、食べすぎれば健康を害しますよ。
最初は恐怖もあると思いますが、これからストーマと一緒に暮らしていくということを理解してもらい、いろいろ挑戦してみようとする気持ちを育ててください。
❻災害時の備え
・災害時に備えて、ストーマ装具一式をそろえた袋などを用意しておくといざというときにも安心です。
・装具は劣化すると粘着力が落ちるので、使用している装具の箱に書いてある使用期限を参考にしてください(多くの装具の保管期間は3年くらい)。といっても、箱から出してしまうと期限がわからなくなるため、1年程度で入れ替えましょう。
用意しておくもの
・はさみ
・装具(10日間程度分)
・ガーゼやタオルを切ったもの
・パウダーなどのアクセサリー類
・清拭剤
・ウェットティッシュ(おしりふき)
・ ストーマ袋廃棄用のビニール袋(におい対策。ジップロック®等のファスナー付きタイプがおすすめ)
保管をするときは、
❌ 高温多湿、冷蔵庫などの低温の場所での保管
❌ 直射日光のあたる場所での保管
❌ 強い圧力がかかる場所での保管
❌ 1年分を超えるような大量購入による長期保存
などは避けるようにしてくださいね。
ストーマ造設・閉鎖術については、ストーマ(小腸癌・大腸癌のページ)をチェックしてね!
【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
【2021/11/15発売!】
『ナスさんが答える!ぴんとくるお悩み相談室』
「先輩に叱られるのがつらい」「丁寧すぎて注意された」「リーダー業務のコツを知りたい」「やる気のない自分に自己嫌悪」…。
看護師がぶち当たるいろんなお悩みに、現役看護師が全力で答えます!
読むと「明日からもがんばろう!」って気持ちになれるかも。
本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂