ストーマ装具の選択
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回はストーマ装具の選択について解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
ストーマ装具の選択の考え方
術後、ストーマの浮腫が落ち着いたら社会復帰用装具に変更していきましょう。
ストーマ装具は、ストーマという相棒と患者さんが一緒に暮らしていくなかで絶対に欠かせない「防御服」!
便の性状、腹壁の状態、 ADL、誰が交換するのか、経済的な状況に至るまで「退院した後の生活」を患者さんと一緒に想像しながら、その人の個性にあわせたものをしっかりと選択していきましょう!
ストーマがあっても患者さんが安心して普段どおりに近い生活を送れるよう、その方にあった装具を選んであげましょう!
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装具選択のポイント
ストーマ周囲にしわができるとそこから便が伝い、漏れにつながります。「しわ」とひと口にいっても、腹壁の状態が変わるような深いしわから細かく入る小さいしわまでさまざま。
まずは、「ストーマ周囲の凸凹をどう補正するか」が装具を選択するうえで大切なポイントになります。
それから、「スキントラブルを起こさないか」「患者さん本人あるいはご家族が装着を行えるか」「経済的に負担にならないか」など、さまざまな角度から患者さんの生活をみすえて、装具を検討しましょう。
❶イレオストミー用 or コロストミー用?
どこにストーマを造設するかを知ることで、便の性状はある程度予想できます。
イレオストミーとコロストミーの便の性状の違いは、要は便中の水分量の違い。イレオストミーなら水様~泥状のいわゆる下痢状の便が出てきます。コロストミーなら軟便~有形便が出てきますが、上行結腸からは泥状に近い軟便が出て、下行結腸に向けて硬い便になります。
装具にもイレオストミー用、コロストミー用がありますが、実際は使用した後の装具の膨潤(水分を含んで膨らんで崩れる)や溶解(水分で溶けて崩れる)の度合を観察しながら判断しましょう。
目安はストーマ周囲の膨潤・溶解が1cm以内であること! 装具の交換日までの間、膨潤・溶解が1cm以内に収まるものを検討しましょうね。
❷平面装具 or 凸面装具?
硬い腹壁(図1)には腹壁に沿えるよう軟らかい装具、軟らかい腹壁(図2)には腹壁で埋もれてしまうストーマを固定してストーマ周囲のしわの補正もできるような硬い装具を選ぶのが基本です。
しかし、ここは基本だけ頭に入れておいて、患者さんの腹壁に合った装具を選択しましょう。
平面装具は腹壁に沿えるような軟らかいものがほとんどです。凸面装具は中央がストーマを固定するように出っ張っており、そのぶんある程度の硬さもあります。ただし、最近では「軟らかい凸面装具」もあってとても便利です。
腹壁の軟らかさのチェック方法
二横指を腹壁に当てます
❸単品系 or 二品系?
ストーマ装具には、ストーマ袋と面板が一体化した単品系(ワンピース)と、分離している二品系(ツーピース)があります。
単品系のメリット
・一体型なので、装着後のかさばりが少ない
・二品系に比べて軟らかいものが多い
・面板からストーマ袋がはずれる心配がない
・二品系に比べて安価
単品系のデメリット
・ストーマ袋のみを交換したいときでも面板ごとはずす必要がある
・ストーマ袋の上からストーマを確認しながら装着する必要があり、ストーマの位置を確認しづらい
・硬めの面板でも二品系に比べると固定力は劣る
・ストーマ袋と面板が分離しているので、必要に応じてストーマ袋のみの交換が可能
・目的に応じてストーマ袋の種類を変えることができる(活動時には目立たないよう小さいストーマ袋、就寝時は大きいストーマ袋、入浴時使用できる蓋などもある)
・ストーマ袋を固定するフランジがあるため、腹壁を固定できるものもある
二品系のデメリット
・フランジ部分からストーマ袋がはずれる心配がある
・フランジにストーマ袋を装着する必要があるため、ある程度の器用さや手指の巧緻性が必要
・単品系に比べて高価
❹フリーカット or プレカット or 自在孔?
ストーマケアの基本は「はがして洗って切って貼る」ですが、ストーマ自体の大きさが安定すれば、プレカット(すでに面板がカットされているもの)を選択することで、切るという手順を省くことができます。
もっとも、プレカット製品のないものもあるので、具体的な選択のポイントとしては、「今後もプレカット製品を使用し続けることができそうか」という視点から、プレカットのある製品/ない製品を選択することもできます。
また、はさみを使えない患者さんには、面板の中央が軟らかく指で広げることができる自在孔という商品もあります。
プレカットのメリット
・はさみでカットする必要がない(一体型では、カット時にストーマ袋にはさみで傷をつけるリスクを避けられる)
プレカットのデメリット
・楕円形のストーマには使用が難しいこともある
・ストーマの大きさが変わるようなトラブルがあったときに対処しづらい
自在孔のメリット
・はさみが使えない人、不器用で切るのが不安という人でも安心して使える
・面板自体は軟らかいものが多いが、押し広げることで厚みがでるため、ある程度ストーマ頸部の固定ができる
自在孔のデメリット
・商品自体が少ない
・やや高価
❺全面皮膚保護剤 or テープ付き?
これまで紹介したストーマ装具は基本的に面板の全面が皮膚の保護剤でできていますが、なかにはストーマ周囲のみが皮膚保護剤でできていて、外縁はテープでできているものもあります。テープ部分は薄いため、皮膚保護剤では弾いてしまうような腹壁にも密着します。
テープ付きのメリット
・装具を装着できるスペースが狭い場合などに使用できる
・皮膚保護剤よりしっかりと固定ができる
・皮膚が強く活動量が多い人にも向いている
・傍ヘルニアなどの変化にも対応しやすい
テープ付きのデメリット
・テープを長時間皮膚に密着させることになるので、皮膚が弱い人には向かない
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ストーマケアアクセサリーについて
ストーマケアアクセサリーとは、装具を装着する際に面板だけでは補正しきれない腹壁のしわを補正したり、皮膚を保護したりなど、ストーマと生活するうえでの「あれば便利」をかなえてくれるものの総称みたいなものです。
❶皮膚保護剤
皮膚を保護したり、漏れを防いだりするものです。いくつかタイプがあり、それぞれの特徴は表1のとおりです。
個人的にはあまりこれらの力を借りないように頑張りたい…
どれも超便利そうじゃないですか!
どうしてですか?
ストーマケアは生活とともにあるケアだから、基本はシンプルなのが一番だと考えているんだよね。
アクセサリーを使用するということは、それだけ経済的な負担にもなるし……。
でも、どれも使えば本当に便利だし、すごく高性能なんだよ!なので、これらは「困ったときに頼れるあいつら」と思ってるよ
❷清拭剤
皮膚を清潔に保つものです。基本的に、ストーマは洗浄剤で洗って流せばよいのですが、シャワーが使えない環境などもあります。そのようなときに活躍するアクセサリーです。
スプレータイプやワイプタイプがあり、面板の糊や皮膚の汚れをしっかりと落としてくれます。
❸潤滑剤、凝固剤
便の性状はさまざまで、コロストミーから出る普通便はストーマ袋内にくっついて便を出しづらいですが、イレオストミーから出る便は水様に傾きすぎると漏れなどの原因になってしまいます。必要に応じてストーマ袋内に潤滑剤や凝固剤を入れておくことで、こうしたトラブルを防ぐことができます。
〈潤滑剤〉
ストーマ袋内の便の付着を防ぎ、便破棄を容易にするためのものです。液状で、ストーマ装具装着時、便破棄後にストーマ袋の中に入れて使用します。潤滑剤をストーマ袋に注入した後は、ストーマ袋全体に液体を行き渡らせます。なお、潤滑剤は便破棄時に毎回使用しないと効果は続きません。
〈凝固剤〉
軟らかすぎる、あるいは水様に近すぎる便をゲル化し、漏れを防ぐために使用します。凝固剤には液状のものや防虫剤に似た袋状のものがあります。こちらもストーマ装具装着時、あるいは便破棄時にストーマ袋の中に入れて使用します。袋状のものは口をあけずに袋のままストーマ袋の中に入れ、使用後は便と一緒にトイレに流すことができます。こちらも便破棄ごとに使用します。
どちらも消臭効果があるし、便破棄や便の性状で困っている人には導入したい製品ね!
…その他にも、まだまだ、装具を腹壁に固定するベルトや、ストーマ袋に貼って使うガス抜きフィルター、ちょっと紹介した二品系装具の入浴時に使える面板の蓋などいろいろあるけど…
WOCナースに聞いてみるのが近道なんだろうけど、メーカーの担当者さんに「こんなのあるー?」って直接聞いてみるのもありかもね。
ストーマ造設が多い病院なら、メーカーの担当者さんと知り合う機会もあるはずだから、仲よくなっておいて損はなし!
患者さんの日常生活の情報収集やストーマサイトマーキング、術前・術後指導、装具選択に日常のケア、それにメーカーの担当者さんと仲よくなって情報までもらうなんて…
そんなにいろいろできませーん!><
そういわれると確かにいろいろやってるなぁ…
患者さんが社会に復帰してできるだけ術前と変わらない生活を送るためなんだから、それくらい頑張りなさい!
排便習慣が変わるっていうのは、それくらい大変で大切なことなのよ!
家に帰ってからこそ、病院内だけでストーマをみている私たちが想像できないような事態に遭遇することがあるんだからね。
そうだよねー
たとえば装具を捨てるときの分別はどうなっているのかとか、災害時の対応や、深い生活までつっこめば性交渉時はどうすればいいのかとか……。
そういうときのためにストーマ外来があるから、病棟でも「なんでも相談できる信頼関係」を構築しておいてもらうのが、とても大切なのよ~
頑張ります!
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【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
【2021/11/15発売!】
『ナスさんが答える!ぴんとくるお悩み相談室』
「先輩に叱られるのがつらい」「丁寧すぎて注意された」「リーダー業務のコツを知りたい」「やる気のない自分に自己嫌悪」…。
看護師がぶち当たるいろんなお悩みに、現役看護師が全力で答えます!
読むと「明日からもがんばろう!」って気持ちになれるかも。
本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂