イレウス
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回はイレウスについて解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
イレウスとは?
イレウスとは、腸がなんらかの原因によって蠕動運動を阻害された状態です。
開腹手術後に腸が麻痺することで起こります。
術後3~5日に起こりやすいです。
多くの場合は数日で軽快します。
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観察項目
❶腹部の症状
腹壁の状態(腹部膨満など)、排便・排ガスや悪心・嘔吐、生理的でない腹痛の有無をチェックしましょう。
通常、絶飲食下でも2~3日で排ガスがみられますが、それ以降にも排ガスがない場合はイレウスの可能性を考え、観察を継続しましょう。
❷腸蠕動音
腸蠕動音は毎日観察!
腸蠕動音の亢進(普段よりよく動いている)、腸蠕動音の消失(数分腸蠕動音が聞こえない)はイレウスを起こしている可能性があります。
金属音とよばれる音が聞こえたら要注意のサインです。
「金属音」を言葉で表現するのって結構難しいんだけど…
たとえるなら、「か〜ん」って水の中で金属をぶつけ合うような高い音かな~
❸腹部X線画像
腹部X線画像でニボー像と呼ばれる特徴的な像が見られます。
これは重力によって腸管内で腸液は下に、ガスは上に溜まることで、水平の液面像を形成することでみられる所見です(図1)。
臥位でしか撮影できないときにはニボー像は見えませんが、ケルクリングひだがよく見えます。
術後の腹部膨満
術後は術中の腸管への刺激による腸蠕動の低下や麻酔の影響などにより、術直後~4日目ごろまで高い確率で腹部膨満がみられます。
この間は腸音も微弱で、排ガスもほとんどありません。また、腹痛や軽度の悪心を訴えられることもあります。
術後4日目ごろを過ぎると腸蠕動が徐々に回復し、排ガス・排便があることで腹部膨満は解消します。
よく漫画やドラマで「おならが出たら治った証拠」と聞きますが、きちんと根拠があるものだったんですね!
また、吻合部に浮腫が出現することもあります。吻合部の浮腫は術後4日目ごろにピークに達し、2週間程度で解消するといわれています。吻合部に浮腫が残存する場合は、浮腫による通過障害をきたすこともあり、これが原因で腹部膨満が持続することもあります。
腹部膨満に関しては、イレウスや腸閉塞でないことが確認できれば、経過を観察しながら腹部を温めるなどして腸蠕動をゆっくりと促すようにしましょう。
また、疼痛コントロールを行いながら離床を促すのも非常に効果的です。
ここでも離床が大活躍!
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対応
麻痺性イレウスの予防には、とにかく離床! 離床して体を動かすことは腸蠕動を促すことにもつながります。
イレウスになってしまったら、まずは絶飲食と補液が必要です。
経口摂取が開始されている場合でも、イレウスを疑う所見があったらいったん食事を止めて、まずは医師に報告しましょう。
そもそも、なんで術後にイレウスになってしまうんでしょう…
腸に刺激を与えるから、だね。
麻酔などの影響もあるけど、触ったり、機械を入れたりすること自体が予期しない腸管神経への刺激となることがあるよ。
排便・排ガスや食事摂取量の観察など看護師の観察眼が光る合併症だね!
患者さんへの食事指導や離床励行も看護師の腕の見せどころだよ!
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【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂