無気肺
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回は無気肺について解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
無気肺とは?
無気肺とは、痰や異物などで気管支または肺が閉塞・狭窄して、その先に空気が入らなくなることで、肺が押しつぶされたような状態になることです。
術中に長時間同じ体位をとることで、痰や分泌物が気管支内に貯留し、閉塞・狭窄をきたすことが原因のひとつです。
術中の挿管も刺激となり、分泌物を増加させるリスクの一つです。
特に喫煙歴がある患者さんの場合、分泌物が多くなったり、肺機能自体が低下していることが多く、無気肺のリスクが高まります。
術後3日以内に発症することが多いとされています。
術前の喫煙歴の有無は重要なチェック項目!
術前から呼吸リハビリや禁煙を行い、手術に備えることもあります。
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観察項目
❶呼吸状態など
呼吸状態の悪化や酸素飽和度(SpO2)の低下、呼吸音、喀痰の増加、胸部X線画像で発見できます。
術前・術直後の胸部X線画像とその後に撮った画像を細かく見比べることでも発見できますが、とにかく毎日肺の音を聞くことで、無気肺の早期発見につなげましょう!
具体的にどんな音に注意したらいいですか?
肺雑音とは違って、とにかく「空気が入っているか」が重要になってくるよ。
無気肺になると、狭窄した先の肺音は聴取できなくなるんだ。
だから、「左右で同じくらい空気が入っている音が聞こえるか」「下葉までしっかり空気が入っているか」を耳をすませてよーく観察しよう!
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対応
予防のためにはとにかく離床!
痛みが強くて痰を喀出するための咳嗽が難しかったり、もともとのADLが低い患者さんの場合は、喀痰を吸引することで気管支閉塞の予防につなげることができます。
もし、無気肺を疑ったら医師に報告です。
診断後は医師の指示のもと、酸素投与や呼吸援助、体位ドレナージなどを行います。
呼吸と離床の関係は?
肺は自分の力で広がることができません。
横隔膜を引き下げることで胸腔が広がって圧力が下がり、下に向かって大きく広がる(息を吸う)ことができるのです。
そして、地球には重力があるので、臥床した状態と離床して体を起こした状態では、体を起こしたほうが横隔膜が下に広がりやすく、空気も肺の下まで入りやすくなります。
離床は無気肺予防に超重要!
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【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂