コラム:腸閉塞とイレウスは別物?!
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回は腸閉塞とイレウスの違いについて解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
日本では、「腸閉塞=イレウス」と考えられていることが多いです。確かに、腸閉塞とイレウスは同じような状態ではありますが、実は原因がまったく違うものを指すのです。
腸閉塞=イレウスだと思ってました…
腸閉塞(bowel obstruction/intestinal obstruction)
なんらかの原因で物理的に腸が閉塞している(道路なら「通行止め」)
イレウス(ileus)
実際には閉塞していないが、腸の動きが悪くてまるで詰まったようになっている(道路なら「道は通れるのにひどい渋滞で車がほとんど動かない」)
しかし、書籍などを見ても両者が明確に区別されていないことも多いですし、単純性/複雑性/閉塞性/機械的/機能的/絞扼性/癒着性/麻痺性/痙攣性…などたくさんの接頭語がつくので、さらに混乱に拍車がかかります。
これらの接頭語と腸閉塞/イレウスを組み合わせると、膨大な種類の用語が飛び交っていることになるね。
上の定義で考えると、あり得ない組み合わせもあるけど…
でも、実際に現場で使われている言葉に目くじら立ててもしょうがないからね。
きちんと原因と状態を見極めることがまずは大事だよ。
腸閉塞/イレウスを考えるときに必要なのは、以下の2つの条件だけです。
・物理的に腸が詰まっている/いない(腸の動きが悪いだけ)
・腸の血の巡りが悪くなっている/いない
これだと2×2=4通りだと思われるかもしれませんが、物理的に詰まっていないのに血の巡りが悪いということはほぼほぼないので、実際には以下の3通りです。
①物理的に詰まっている+血の巡りは悪くない
術後晩期の癒着性腸閉塞は①にあたります。その他に、癌や食餌、腸重積によるものもあります。
②物理的に詰まっている+血の巡りが悪い
緊急手術になるため、②かどうかの判別は非常に重要です。
①と②については、「癒着性腸閉塞」の記事でくわしく解説するよ!
③物理的に詰まっていない+血の巡りは悪くない
術後早期の麻痺性イレウスは③にあたります。腸炎で腸がへたっていたり、手術でいじられて腸がびっくりしたことなどが原因です。
ちなみに、この①〜③をあえてよく使われる用語にあてはめて分類すると、
機械的→①+②
単純性→①
複雑性=絞扼性→②
麻痺性=痙攣性→③
となるよ。
ちなみに、癒着性は①のなかで特に原因が癒着と特定(想定)されているものを指すよ!
【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂