縫合不全
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回は縫合不全について解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
縫合不全とは?
縫合不全とは、縫合部がなんらかの原因で完全にくっつかず、内容物が漏れてしまうことです。
術後1週間前後に起こりやすい合併症です。
胃の術後なら胃液、腸の術後なら便汁が漏れてしまい、腹膜炎を併発します。
縫合不全の主な原因は?
縫合部にテンションがかかると、圧が高くなって血流が悪くなります(図1)。
創の治癒には血流が確保されていなければならないですが、テンションがかかると血流が確保できず、縫合部が癒合しないため、縫合不全の原因となります。
縫合部にテンションがかかると縫合不全が起こりやすくなる!
縫合不全から腹膜炎を起こすと、ショック状態に陥ることもあるよ!
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観察項目
❶ドレーン排液の性状
縫合不全を知るにはとにもかくにもドレーン排液の性状の観察が一番!
きれいにみえても便臭がするときには縫合不全が強く疑われます。
しっかりと観察を行い、異常の早期発見に努めましょう!
くわしくは「ドレーンの観察・ケア」をチェックしてね!
❷感染徴候
縫合部の感染、あるいは縫合不全による腹膜炎などを起こしている場合は発熱、炎症反応(CRP、WBC)の上昇などの感染徴候が見られます。
なぜ、縫合不全は怖い?
外部からものを取り入れる消化管の中は、体の「外」です。口〜肛門までをひとつの「穴」と考えると、人間は究極的にはちくわ型なのです。
すると、胃や腸の中は、ちくわの「穴の中」なので、体の「外」になりますね。そして、消化管は体の外部から取り入れたものを絶対に体の内部に漏らさない構造になっています。
なぜなら、臓器を収めている体腔内は無菌状態だから! そして、外部から取り入れたもの=食べ物や飲み込んだ唾液などは基本的に雑菌だらけ。
縫合不全は雑菌まみれの物質が体の中に入っていくという恐ろしい合併症なのです!
体の中の管に食べ物や消化液が正常に流れるということがどれだけ大切なのかっていうことですね…
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対応
こちらもすぐに医師に報告!
腹膜炎などに対して抗菌薬の投与、漏れてしまったものを体外に出すためにドレナージ術、または再手術を行う可能性があります。
偽膜性腸炎
細菌を殺す薬である抗菌薬を使用すると、腸内細菌のバランスが崩れて、時にいわゆる「悪玉菌」が非常に多くなってしまうことがあります。その代表がClostridioides(Clostridium) difficile(CD)で、偽膜性腸炎を起こすと、頻回な水様の下痢をくり返します。
抗菌薬を使った後ならいつでも起こりうる合併症ですが、消化器外科の疾患で抗菌薬を使わないことはほぼ皆無なのでよく見ます。
消化器外科術後の下痢はよくありますが、水様で頻回で改善がないときは必ずこれを疑いましょう。便検査で診断され、内服薬(バンコマイシンやメトロニダゾール)で改善します。
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【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂