早期離床
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回は早期離床について解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
術後の早期離床は、「痛みはあるが、百利あり」!
離床の目的
術後出血のリスクが高い24時間が経過したら(あるいは安静解除後)、なるべく早く離床することが早期回復につながります。
しっかりと疼痛コントロールを行い、術前のADLに応じた早期離床を意識することが合併症予防にもつながります!
早期離床のメリット
・全身の血流がよくなることで術創の早期回復につながります。
・腸蠕動が促され、術後イレウスの予防になります。
・体を起こすことで呼吸状態が改善されます。
・下肢のポンプ機能を促進することで、深部静脈血栓症の予防にもなります。
体を動かすからおなかが空いて経口摂取量が増えるとかね!
ほんとに術後は「いかに早期離床をするか」にかかっているんだよ!
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離床を行うための準備
❶バイタルサインのチェック
まずは全身状態の把握から!
血圧が低かったり、発熱している人を無理に起こすのはやめましょう。
❷ドレーン・カテーテル管理
術式によっては大量のドレーンなどが体に入っていることがあります。
輸液ポンプなどのはずせるルート類は、事前にはずしておきます。
むやみに動かすと自己抜去につながるため、必ず看護師が管理しながら慎重に離床を進めましょう。
❸疼痛コントロール
疼痛がある状態の離床は患者さんにとって苦痛です。
術後の疼痛は起き上がるとき(腹筋に力を入れたとき)に増強する傾向にあります。
しっかりと疼痛コントロールを行い、徐々に離床を目指しましょう。
❹眩暈の有無の確認
特に女性では、麻酔の影響でヘッドアップしたときにめまいや悪心を訴えることが多いです。
眩暈は転倒につながるため、症状が強いときは、まずは不快な症状の改善を目指します。
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離床の方法
①ヘッドアップ
バイタルサインや疼痛の様子をみながら可能な範囲でゆっくりとヘッドアップ。
②ヘッドアップ~起坐位保持
ある程度ヘッドアップができるようになったら、その状態で保持。
③起坐位~端坐位
ヘッドアップせず、腹筋で起坐位をとると腹圧がかかり、創部離開のリスクが上がります。
端坐位をとるときは起き上がるときも側臥位から起き上がるように指導します。
④端坐位~立位
転倒に注意しながら立位保持の援助をします。端坐位がとれれば、立位時にはそれほど痛みません。
胸を張るようにすると痛みが増強するので、創部を片手で強く抑えながら背中を丸めてゆっくりと立位をとると疼痛が緩和されます。
⑤立位~その場での足踏み
端坐位での足踏みでも可。術前のADLに応じて離床を行います。
ベッド柵や動かない椅子につかまるなどして注意しながら行います。
⑥歩行~歩行距離を伸ばす
初回の歩行は必ずナースが付き添い、歩行状態を観察しましょう。
段階的に進めていきましょうね!
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【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂