じん肺(1)珪肺
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は珪肺について解説します。
佐野由紀子
さいたま赤十字病院10F西病棟看護師長
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
珪肺とは?
遊離珪酸によって生じるじん肺(表1)を、珪肺と呼びます。採石、採鉱、窯業、鋳物製造業、金属精錬、研磨などの職業に従事する人に発症しやすいとされています。
吸入された遊離珪酸が肺胞に到達すると、肺胞マクロファージに貪食され、炎症反応を引き起こします。その結果、肺内に珪肺結節と呼ばれる線維化結節ができ、さらに融合されて塊状巣が形成されます。また、遊離珪酸の一部がリンパ流に入って肺門リンパ節に到達すると、珪肺結節が形成されます。
肺気腫が高頻度に認められ、進行すると肺機能悪化が強くなります。
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患者さんはどんな状態?
初期は無症状ですが、進行すると咳嗽や喀痰といった気管支炎症状、労作時の呼吸困難が出現します。
離職後も症状が増悪する場合があります。
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どんな検査をして診断する?
X線・高分解能CT(HRCT)において、両側にびまん性の粒状影がみられます(図1)。進行すると珪肺結節が融合し、大きな塊状になったもの(塊状巣)がみられることがあります。
呼吸機能検査では拡散能、%肺活量(%VC)の低下がみられます。
memo:%肺活量(%VC)
実際測定して肺活量が予測肺活量(年齢・性別・身長などの計算から求められた肺活量)の何%にあたるかを求めた値。正常範囲かどうかがわかる。
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どんな治療を行う?
定期的な健康診断と、粉じんを吸入しないための予防が重要となります。
薬物療法として鎮咳薬、去痰薬、気管支拡張薬を投与します。
残存肺機能の維持のため、禁煙、呼吸リハビリテーションを行います。
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看護師は何に注意する?
職業歴を聴取し、診断につながる情報を収集します。
残存肺機能を維持するため、禁煙指導が重要です。
呼吸器感染症の予防を指導します。
じん肺法に基づいた定期健康診断を受けることの重要性を説明します。
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じん肺(珪肺、石綿肺)の看護の経過
じん肺(珪肺、石綿肺)の看護の経過は以下のとおりです(表2-1、表2-2、表2-3、表2)。
表2-1 じん肺(珪肺、石綿肺)の看護の経過(発症から入院・診断)
表2-2 じん肺(珪肺、石綿肺)の看護の経過(入院直後・急性期)
表2-3 じん肺(珪肺、石綿肺)の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社