肺胞蛋白症
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は肺胞蛋白症について解説します。
佐野由紀子
さいたま赤十字病院10F西病棟看護師長
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
肺胞蛋白症とは?
肺胞蛋白症とは、サーファクタント由来の物質が肺胞を主とする気腔(終末細気管支から末梢領域)に異常に蓄積する疾患です。ガス交換が障害され、低酸素血症や肺活量の低下をきたし、呼吸困難や咳嗽が生じます。
memo:サーファクタント
肺胞を膨らませる界面活性物質。
比較的30~50歳代の男性に多くみられます。
原因別に、自己免疫性・遺伝性・続発性に分けられ、90%が自己免疫性となっています(表1)。
目次に戻る
患者さんはどんな状態?
労作時呼吸困難、咳嗽、痰などが主症状です(図1)。
目次に戻る
どんな検査をして診断する?
X線
両側肺野に肺門を中心とする蝶形陰影(butterfly shadow)と呼ばれる浸潤影を認めます(図2)。
高分解能CT
両側肺野に地図状すりガラス陰影を認め、メロンの皮様陰影(crazy paving appearance)の小葉間隔壁肥厚や小葉内網状影を認めます。
気管支肺胞洗浄(BAL)
乳白色に混濁したミルク状、米のとぎ汁状の洗浄液が特徴です。
血液検査
血算、生化学(LDH、KL-6、SP-D、SP-A、CEAなど)、動脈血ガス、抗GM-CSF抗体。
肺機能検査
拡散能力検査(DLCO)など。
肺生検
病理診断をします。
目次に戻る
どんな治療を行う?
全肺洗浄
全身麻酔下でダブルルーメンの挿管チューブを用いて片肺で換気し、対側肺に生理食塩水(合計20L以上)を肺に注入して、気腔に貯留したサーファクタント由来物質を洗い流します(図3)。高度の呼吸不全の症例ではECMOを用いて全肺洗浄を行うことがあります。
反復区域洗浄法
気管支ファイバースコープを用いて、500~1000mLの生理食塩水を肺の1つの区域に注入し、洗浄します。気道への局所麻酔で実施します。
GM-CSF吸入療法
近年、自己免疫性肺胞蛋白症に行われており、今後の治療法として期待されています。
酸素療法
呼吸困難などの症状や酸素飽和度の低下がある場合は酸素を投与します。在宅酸素療法(HOT)が必要となる場合もあります。
目次に戻る
看護師は何に注意する?
既往症を聴取します。
呼吸困難の有無を確認します。
原因となる可能性を想定し、生活環境について確認します。
喫煙をしている場合は、禁煙を勧めます。
労作時呼吸困難を呈するため、労作時のSpO2を測定します。
目次に戻る
肺胞蛋白症の看護の経過
肺胞蛋白症の看護の経過は以下のとおりです(表2-1、表2-2、表2-3、表2)。
表2-3 肺胞蛋白症の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)
目次に戻る
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社