薬剤性肺炎
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は薬剤性肺炎について解説します。
佐野由紀子
さいたま赤十字病院10F西病棟看護師長
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
薬剤性肺炎とは?
薬剤性肺炎とは、薬剤の投与によって生じる肺障害です。急性あるいは亜急性の間質性肺炎、好酸球性肺炎などがあります。抗がん剤、抗リウマチ薬、漢方薬、消炎鎮痛薬や抗菌薬などの医療用医薬品のほか、一般用医薬品、健康食品なども原因となります。
薬剤性肺炎の主なリスク因子は表1です。
発生機序は肺を直接的に障害する細胞障害性と肺を間接的に障害するアレルギー性(免疫系細胞の活性化)とに大別され(図1)、アレルギー性の症例が多いとされています。
薬剤の使用に伴い新たに肺病変が出現し、咳嗽・呼吸困難・発熱などを呈し、X線やCTで異常陰影がみられた場合には、薬剤性肺炎を疑い、原疾患の悪化や心不全、感染症などとの鑑別を行います。
薬剤によって、投与から発症までの期間にある程度の特徴があります(表2)。
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患者さんはどんな状態?
発熱、咳嗽、呼吸困難が多く、皮疹を伴うこともあります。
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どんな検査をして診断する?
X線、高分解能CT(HRCT):小葉間隔壁肥厚を伴うすりガラス陰影がみられます(図2)。
血液検査:好酸球増多に関連した薬剤は、抗リウマチ薬、消炎鎮痛薬が多いとされています。
気管支肺胞洗浄(BAL):リンパ球、好酸球(ときに好中球)の増多がみられます。
既存の肺病変の増悪、感染の除外や被疑薬によって生じるパターンから、薬剤中止による所見の改善の有無により診断します。
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どんな治療を行う?
早期の被疑薬の中止が重要であり、これのみで改善することも多くあります。
薬物療法として、ストロイドを投与します。
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看護師は何に注意する?
既往症を聴取し、内服歴や、市販薬や健康食品の摂取状況を確認します。
皮疹など全身状態を確認します。
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薬剤性肺炎の看護の経過
薬剤性肺炎の看護の経過は以下のとおりです(表3-1、表3-2、表3-3、表3)。
表3-3 薬剤性肺炎の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社