じん肺(2)石綿肺
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は石綿肺について解説します。
佐野由紀子
さいたま赤十字病院10F西病棟看護師長
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
石綿肺とは?
石綿(アスベスト)は繊維状の珪酸化合物であり、石綿粉じんを吸入することによって生じるじん肺を石綿肺と呼びます。
memo:石綿
きわめて細い鉱物繊維で、丈夫で変化しにくい性質から、建材、摩擦材、断熱材などさまざまな工業製品に使用されてきたが、2004年より使用・製造が原則として禁止されている。
わが国で使用されてきた石綿の種類は、白石綿(クリソタイル)が最も多く、茶石綿(アモサイト)、青石綿(クロシドライト)も使用されていた。発がん性は青石綿、茶石綿、白石綿の順に強いといわれている。
石綿繊維は細くて長いため、肺内に吸入されるとマクロファージで貪食されにくく、細気管支や肺胞に滞留します。初期変化は細気管支周囲の炎症、線維化として始まり、隣接する細胞壁の線維性肥厚へ進展します。
石綿呼吸障害は数年から数十年かけて生じ(図1)、最終的には肺線維症となり肺容量の減少をもたらし、呼吸不全へと至ります。
港湾労働や建設業、解体業などの職業従事者に発症しやすいとされており、肺がんや中皮腫の大きな危険因子です。
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患者さんはどんな状態?
咳嗽や痰、呼吸困難が主症状です。
潜伏期間が長いため、石綿に曝露する職業を離職後も症状が増悪する場合があります。
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どんな検査をして診断する?
職業歴(石綿高濃度曝露歴)を確認します。
X線・高分解能CTで線維化所見、胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)を(図2)、気管支肺胞洗浄(BAL)で石綿小体を確認します。特発性肺線維症との鑑別が必要です。
珪肺に比べ拡散能の低下、肺活量の低下(拘束性換気障害)、併存する気腫変化により1秒率、1秒量の低下(閉塞性換気障害)を示します。
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どんな治療を行う?
石綿自体に発がん性があるため、定期的な健康診断が重要となります。
薬物療法では、鎮咳薬、去痰薬、気管支拡張薬を投与します。
残存肺機能の維持のため、禁煙、呼吸リハビリテーションを行います。
必要に応じて在宅酸素療法(HOT)を行います。
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看護師は何に注意する?
職業歴を聴取し、診断につながる情報を収集します。
残存肺機能を維持するため、禁煙指導が重要です。
呼吸器感染症の予防を指導します。
離職後も肺がんや中皮腫発症の危険があるため、じん肺法に基づいた定期健康診断を受けることの重要性を説明します。
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じん肺(珪肺、石綿肺)の看護の経過
じん肺(珪肺、石綿肺)の看護の経過は以下のとおりです(表1-1、表1-2、表1-3、表1)。
表1-1 じん肺(珪肺、石綿肺)の看護の経過(発症から入院・診断)
表1-2 じん肺(珪肺、石綿肺)の看護の経過(入院直後・急性期)
表1-3 じん肺(珪肺、石綿肺)の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社