ニューモシスチス肺炎(PCP)

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はニューモシスチス肺炎(PCP)について解説します。

 

 

平澤真実
さいたま赤十字病院ICU看護主任
慢性呼吸器疾患看護認定看護師

 

 

ニューモシスチス肺炎(PCP)とは?

ニューモシスチス肺炎(PCP;Pneumocystis pneumonia)とは、主に後天性免疫不全症候群(AIDS;acquired immunodeficiency syndrome)や抗がん剤治療中の患者さん、ステロイド服用中の膠原病患者さんなど、免疫不全の状態にある患者さんが真菌の一種であるPneumocystis jirovecii(ニューモシスチス イロベチイ)に感染することにより起こります。

 

真菌とは真核微生物の一種で、カビやキノコ類が含まれます。

 

地球には約10万種類が存在するといわれていますが、そのうちヒトに病原性を示すものが真菌感染症の原因となります。

 

重症で予後不良な肺炎であり、特にAIDSの患者さんに高頻度でみられます。

 

 

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患者さんはどんな状態?

主な症状は、乾性咳嗽、発熱、呼吸困難、全身倦怠感、胸痛などです。

 

 

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どんな検査をして診断する?

血液検査では、β-D-グルカンの上昇がみられます。

 

X線やCTでは、びまん性のすりガラス陰影、多発する囊胞結節影などが認められます(図1)。

 

図1 ニューモシスチス肺炎のX線、CT

ニューモシスチス肺炎のX線、CT

 

喀痰検査や気管支鏡検査によって確定診断を行います。

 

 

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どんな治療を行う?

治療はST(sulfamethoxazole trimethoprim)合剤を第1選択薬として使用します。

 

呼吸状態が悪く、低酸素を伴っている場合にはステロイドを併用します。

 

HIV感染者はCD4陽性T細胞が200/mm³未満の場合、さまざまな合併症が出現しやすいといわれています(図2)。そのため、AIDS発症前にST合剤の予防投与も行われており、近年はHIV感染者のニューモシスチス肺炎は減少しているといわれています。

 

図2 HIV感染症の病状の経過図

HIV感染症の病状の経過図

NIID国立感染症研究所:AIDS(後天性免疫不全症候群)とは.より引用(2020.12.01アクセス)

 

 

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看護師は何に注意する?

免疫不全患者さんは易感染状態にあります。看護師が感染症を媒介しないよう、患者さんの処置に当たるときにはスタンダードプリコーションを徹底しましょう。

 

急激に呼吸状態が悪化する場合もあるため、フィジカルアセスメントが重要です。特に咳嗽の悪化や頻呼吸、呼吸困難感を訴える場合は、早急に医師に報告しましょう。呼吸状態の変化は循環動態や意識にも大きく影響します。呼吸状態のみならず全身をしっかりと観察することが大切です。

 

 

 

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肺真菌症の看護の経過

肺真菌症の看護の経過は以下のとおりです(表1-1表1-2表1-3表1)。

 

表1-1 肺真菌症の看護の経過(発症から入院・診断)

肺真菌症の看護の経過(発症から入院・診断)

 

表1-2 肺真菌症の看護の経過(入院直後・急性期)

肺真菌症の看護の経過(入院直後・急性期)

 

表1-3肺真菌症の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)

肺真菌症の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)

 

表1 肺真菌症の看護の経過

※横にスクロールしてご覧ください。

肺真菌症の看護の経過

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

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