レビー小体型認知症(DLB)
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はレビー小体型認知症(DLB)の検査・治療・看護について解説します。
木戸佐知恵
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任
認知症看護認定看護師
小川和之
東海大学医学部付属八王子病院看護部主任
認知症看護認定看護師
レビー小体型認知症(DLB)とは?
レビー小体型認知症(DLB;dementia with Lewy bodies)は、アルツハイマー型認知症に次いで多い(約20%)認知症です(図1)。
アルツハイマー型認知症が女性に多いのに比べ、レビー小体型認知症は男性のほうが多く、女性の約2倍ともいわれています。
レビー小体とは、神経細胞にできる特殊なタンパク質(αシヌクレイン)などが凝集したものをさします。レビー小体が脳の大脳皮質や脳幹に多数出現し、神経細胞が減少することで、認知症が発症します。
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どんな検査をして診断する?
レビー小体型認知症は、特徴的な臨床症状によって疾患の存在が疑われます。また、アルツハイマー型認知症と同様に、症状が現れる前の時期から、脳の中での病理変化が生じていることがわかっています。
レビー小体は心臓を支配する交感神経にも蓄積するため、MIBG心筋シンチグラフィで、心筋での薬剤の取り込み低下がみられます。
ドパミントランスポーターシンチグラフィ(ダットスキャン®)で、線条体における取り込み低下がみられます。
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患者さんはどんな状態?
特徴的な症状として、認知機能の変動、幻視、妄想、パーキンソニズム、薬への過敏、自律神経症状、レム睡眠行動障害があります(図2、表1)。
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どんな治療を行う?
レビー小体型認知症そのものを根本的に治療する方法は、現在のところ確立されていません。治療の中核は症状に合わせた対症療法が中心となり、アルツハイマー型認知症と同様に薬物療法と非薬物療法を行います(表2)。
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看護師は何に注意する?
幻視への対応
本人にとってそこにいるものとして見えているため、否定も肯定もせず、そのことを理解し、受け入れることが大切です。「何も見えない」「錯覚だ」などと否定したり、感情的に対応すると、混乱をまねくだけでなく妄想へ発展することもあります。
見えるものによっては恐怖を感じることもあるかもしれません。本人の感情を理解したうえで安心できるような対応を行いましょう。
memo:幻視への対応方法
虫やヘビなどの嫌なものが見えている場合は、本人の前で虫が見えるところを叩いたり、追い払うしぐさをしたりすることで、いなくなったと感じることができる。知らない人が見えているときは「もう帰られましたよ」など話を合わせてから、違う話題に変えてみるのもよい。
身体活動の援助
昼間に寝ていると夜眠れなくなり、夜に幻視が現れたり、場所がわからなくなり病室から出ていこうとしたりする場合があります。自律神経障害も起こりやすく便秘傾向になるため、起立性低血圧などに気をつけながら、昼間は活動を促し、適度に身体を動かすように援助しましょう。
履物はサンダルではなく、靴など転びにくいものを選び、転倒に注意します。
memo:転倒予防の方法
低い段差でもつまずきやすく、バランスを崩しただけで転倒しやすいため、後ろからいきなり声をかけたり、手を引っ張ったりすると転倒する場合がある。病状によって動作が遅くなるため、急かさず本人のペースに合わせる。
認知機能の変動への対応
認知機能の変動により、日常生活動作などができるときとできないときがあります。無理強いせず、必要時は待ったり手伝うなどの援助が必要です。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社