前頭側頭型認知症(FTD)
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『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は前頭側頭型認知症(FTD)の検査・治療・看護について解説します。
木戸佐知恵
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任
認知症看護認定看護師
小川和之
東海大学医学部付属八王子病院看護部主任
認知症看護認定看護師
前頭側頭型認知症(FTD)とは?
前頭側頭型認知症(FTD;frontotemporal dementia)は、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮し、血流が低下することによって、さまざまな症状が引き起こされる病気です(図1)。
最近の研究で、脳の神経細胞の中にある、タウタンパクおよびTDP-43というタンパク質の関与や、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を合併することがあることがわかってきました。しかし、原因解明までにはいまだ至っていません。
前頭側頭型認知症の初期には物忘れや失語はあまりみられず、人格の変化や非常識な行動などが目立ちます。そのため、精神疾患と診断されてしまう場合があるので、鑑別診断が重要となってきます。
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患者さんはどんな状態?
前頭葉・側頭葉の障害により、常同行動、社会性の欠如、脱抑制、感情鈍麻、言語障害、注意・集中力低下といった特徴的な症状が表れます(表1)。
言われたことをオウム返しする、いつも同じ言葉を言い続けるといったことになり、自発的な言葉が出にくくなります。
行動が落ち着かず1つの行為が続けられないことや、関心がなくなると診察室や検査室から出て行く立ち去り行動などがみられます。
症状は緩徐に進行し、発症後平均6~8年で寝たきりの状態となります。
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どんな検査をして診断する?
問診を行い、前頭側頭型認知症の特徴的な症状の有無を確認します。できるかぎり本人だけでなく家族にも同席してもらい、自宅での様子を客観的視点から聞くことで、総合的に判断します。
アルツハイマー型認知症と区別するためにCTやMRIによって前頭葉や側頭葉前部が萎縮しているか確認します。また必要に応じてSPECTやPET検査を行い、血流や代謝の低下をきたしていたときに、前頭側頭型認知症と診断します(図2)。
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どんな治療を行う?
前頭側頭型認知症に対し、根治を目的とした治療法は確立されていません。そのため、例えば常同行動を利用し、毎日同じ時間にデイサービスに通うなど、本人に合わせた細やかなケアを行っていくことが大切です。
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看護師は何に注意する?
症状への対応
常同行動を途中で遮らないようにします。遮ることで興奮をまねく恐れがあるからです。常同行動を利用して、本人の得意な作業や行動を生活に取り入れ日課にするような工夫が必要です。
行動抑制ができない自分に対し、ある程度自覚や認識している人もいます。その人のつらさに寄り添えるようなかかわりを行いましょう。
リハビリテーション、レクリエーション
認知機能や運動機能は比較的保たれているため、リハビリテーションやレクリエーションを積極的に取り入れると、楽しい活動や生産的な行為に注意が向き、自立して他者から必要とされているという感覚をもつことにつながります。
作業などを行う場合、道具は見えやすいところに置き、すぐ手に取れるところに準備します。やさしい言葉をかけ、自然なかたちで道具を手渡すなどの工夫をしましょう。言葉による強い指示や無理に誘うことは避けてください。立ち去り行動を誘発することがあります。
以前に就いていた仕事や趣味から、得意なものを日常に取り入れる工夫が必要です。ゲームや音楽鑑賞、編み物など本人の好むものを選び、毎日の日課とします。それらを行っている間は問題行動が減り、保たれている機能の維持にも役立つとされています。
食事の環境調整、誤嚥の予防
人のものを食べたり、口いっぱいに食べ物を頬張ったりしてしまうことがあります。そのような場合、集団ではなく個人で食事が摂れるような環境調整が必要です。また誤嚥のリスクもあるため見守るなどの対応も必要です。
家族ケア
前頭側頭型認知症は、本人だけでなく介護する家族やその周囲にとっても負担が大きいです。介護に対する労をねぎらいつつ、特徴的な症状への理解を深めて対応していくことが大切です。
特徴的で対応が難しい症状が多いことから、家族などの介護負担はとても大きなものとなります。そのため家族などの介護者への支援として、専門医や社会資源などをうまく活用し、さまざまなサービスを取り入れるなど、介護負担の軽減を行うことも必要となってきます。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社