下垂体腺腫

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は下垂体腺腫の検査・治療・看護について解説します。

 

市川智代
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任

 

 

下垂体腺腫とは?

下垂体腺腫は、下垂体前葉細胞から発生する良性の腫瘍です(図1図2)。増殖速度は遅く、他の部位に転移することはまれです。

 

図1下垂体腺腫

図1下垂体腺腫

 

図2脳腫瘍の分類

図2脳腫瘍の分類

 

下垂体腺腫は、ホルモン産生の有無により、機能性腺腫非機能性腺腫に分類されます。非機能性腺腫が約半数と最も多く、機能性腺腫は産生するホルモンによって発生頻度や症状が異なります。

 

 

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患者さんはどんな状態?

非機能性腺腫

腫瘍が大きくなり、周囲を圧排することで頭痛、両耳側半盲図3)、視野狭窄などの症状が出現します。

 

図3両耳側半盲

図3両耳側半盲

 

ホルモン産生・分泌がないため、大腺腫となって発見されることが多いです。

 

機能性腺腫

ホルモンの過剰分泌により症状が出現するため、微小腺腫のうちに発見されることが多いです。

 

機能性腺腫の種類と特徴は表1のとおりです。先端巨大症(図4)やクッシング病(図5)などの症状が起こります。

 

表1機能性腺腫の種類と特徴

表1機能性腺腫の種類と特徴

 

図4先端巨大症

図4先端巨大症

 

図5クッシング病

図5クッシング病

 

 

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どんな検査をして診断する?

MRI検査CT検査、X線検査、ホルモン検査などを行います(図6)。

 

図6下垂体腺腫の画像診断

図6下垂体腺腫の画像診断

 

 

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どんな治療を行う?

外科的治療により腫瘍摘出を行います。

 

腫瘍が大きいものは開頭手術が必要ですが、最近では内視鏡を用いて手術を行う、経蝶形骨洞到達法(TSS;transsphenoidal surgery;図7)が一般的になっています。

 

図7経蝶形骨洞到達法

図7経蝶形骨洞到達法

 

 

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看護師は何に注意する?

機能性腺腫は術前ホルモン分泌異常による症状に対し、症状のコントロールおよび苦痛の除去に努めます。

 

術後に下垂体ホルモン分泌障害が起こることがあり、その場合はホルモン補充療法を行います。

 

術後に尿崩症髄液漏、視力障害が起こる可能性について患者さんに説明し、異常時は早期に対処できるようにします(表2)。

 

表2術後の観察ポイント

表2術後の観察ポイント

 

memo:尿崩症

下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンの分泌低下により、腎集合管での水の再吸収が障害され、低浸透圧尿が多量に排泄される病態。主症状は口渇、多飲、多尿。

 

memo:髄液漏

体内で脳脊髄液が硬膜外へ漏れ出ること。

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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