神経膠腫(グリオーマ)
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は神経膠腫(グリオーマ)の検査・治療・看護について解説します。
市川智代
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任
神経膠腫(グリオーマ)とは?
神経膠腫(しんけいこうしゅ)は、神経膠細胞(グリア細胞)から発生する腫瘍で、脳腫瘍全体の約20%にあたります(図1)。
脳実質内に浸潤性に増殖し、成人では大脳に多く発生します。
悪性度はGradeⅠ~Ⅳに分類されます(表1)。
memo:膠芽腫
脳腫瘍で最も悪性度が高く、急速に進行する。
浸潤性であるため再発が多く、完治は困難です。脳腫瘍の中でも最も悪性度が高く、悪性度が上がるほど予後は厳しく、平均寿命は術後1~2年といわれています。
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患者さんはどんな状態?
頭痛、片麻痺、失語、意識障害、けいれん発作など、発生部位に応じた症状のほか、腫瘍増大や脳浮腫による頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔気、うっ血乳頭)が起こります(表2)。
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どんな検査をして診断する?
MRI検査やCT検査が中心です(図2)。必要に応じて造影検査を行い、悪性度や腫瘍の浸潤具合を調べます。
MRIの場合、最も悪性度の高い膠芽腫では腫瘍細胞の活動が活発な周囲がリング状に造影され、内部は腫瘍細胞の壊死により黒く抜ける画像所見を呈します。
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どんな治療を行う?
治療は外科的摘出ですが、一般的に浸潤性に発育するため、腫瘍すべてを摘出することは困難な場合が多いです。手術で最大限に摘出し、放射線治療や化学療法などの追加治療を行います。
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看護師は何に注意する?
術後はバイタルサインとともに神経症状(意識状態、瞳孔所見、麻痺の有無)の観察を行います。神経症状が増悪する場合は術後出血や脳浮腫などが予測されるため、ただちに医師に報告して対処します。
ドレーンの観察
術後は、デッドスペースに洗浄液や血液が貯留することを防ぐため、皮下ドレーンが挿入されます。ドレーンからの排液の量・性状に注意して観察します。
排液量の増加がみられた場合は、出血や髄液が混じっている可能性を考えます。
排液が急激に減少した場合は、排液がないことも考えられますが、ドレーンが抜けていることや、閉塞の可能性があります。挿入部の位置がずれていないか、挿入部から排液バッグまでのルートに閉塞がないかを確認し、医師に報告します。
排液が血性から透明に変化した場合は、髄液の可能性を考えます。
創部の観察
術後、創部周囲に発赤や腫脹の増大、熱感、疼痛の増強がみられた場合は、創部感染を疑います。
リハビリテーション
術後急性期から廃用症候群予防に努め、リハビリテーションを行います。
急性期リハビリテーションの目標として、セルフケアの早期自立、安静臥床の期間をできるだけ短縮し早期離床を図ること、基本動作(寝返り、起き上がり、座位、立位など)の獲得が挙げられます。具体的には、良肢位の保持、体位変換、早期座位、立位、他動運動、自助運動、口腔ケア、摂食嚥下訓練などを行います。
退院支援
悪性度の高い脳腫瘍については、患者さん・家族の精神的サポートを行いながら、タイミングを逃さず退院支援への介入を開始します。
退院支援については、入院後もしくは術後早期に情報収集を行い、患者さん・家族の思いを確認します。自宅退院を目指す際は、自宅の環境(寝具、トイレ、手すり、段差など)、家族構成、主な介護者や介護保険の有無、必要なサポートを確認し、家族指導や環境調整を行います。自宅退院が困難な場合でも、患者さん・家族の望む療養先への支援を行います。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社