脳腫瘍
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は脳腫瘍の特徴・分類・看護について解説します。
市川智代
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任
脳腫瘍とは?
脳腫瘍は原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍に分けられます。原発性脳腫瘍は例外を除き、頭蓋外に転移することはありません。
髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)、神経膠腫(しんけいこうしゅ)が、全脳腫瘍の7割を占めています。
脳腫瘍の主なリスク因子は表1のとおりです。
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脳腫瘍の全体像
どんな疾患?
脳腫瘍は、頭蓋内に発生するすべての腫瘍の総称です。
組織学的に「良性」の腫瘍と「悪性」の腫瘍があります。
脳腫瘍は、原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍に分けられます(図1、図2、図3)。
memo:神経鞘腫
末梢神経の髄鞘を形成するシュワン細胞に由来する良性腫瘍。成人に多いが小児にも発生する。
memo:悪性リンパ腫
全身の免疫機能不全によって脳内の中枢神経系に原発する。50歳以上の男性に好発し、進行が早く再発しやすい。
memo:胚細胞腫瘍
10歳代の小児の松果体やトルコ鞍上部に発生する腫瘍。
memo:頭蓋咽頭腫
小児から成人まで幅広く発症し、囊胞を形成しやすい良性腫瘍。トルコ鞍上部に発生する。
memo:血管芽腫
小脳に好発し毛細血管に富む良性腫瘍。
memo:髄芽腫
小児の小脳に発生する代表的な悪性腫瘍。
原発性脳腫瘍は、脳や脳を包む膜そのものから発生した異常な細胞の塊です。
転移性脳腫瘍は、他の臓器に発生した悪性腫瘍が、主に血流に乗って血管内を移動し、脳に運ばれて増殖したものです。
患者さんはどんな状態?
脳腫瘍の主な症状は、頭蓋内圧亢進による一般症状と、局所症状があります(図4)。
memo:ゲルストマン症候群
手指失認、左右失認、失算、失書。
看護師は何に注意する?
治療開始前にも症状が進行する可能性があり、症状の観察には十分注意が必要です。
術後は出血、けいれん発作に対し迅速に対応できるようにし、病棟リハビリテーションを積極的に行い、廃用症候群の予防に努めます。
悪性度の高い脳腫瘍は治療しても長期的に再発することが多く、徐々に悪化し終末期を迎えます。タイミングを逃さず在宅支援、患者さん・家族の精神的サポートを実践していくことが大切です。
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脳腫瘍の看護の経過
脳腫瘍の看護を経過ごとにみていきましょう(表2-1、表2-2、表2-3)。
看護の経過の一覧表はこちら。
表2-3脳腫瘍の看護の経過 一般病棟、自宅療養(外来)に向けて
横にスクロールしてご覧ください。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社