脳出血
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は脳出血の検査・治療・看護について解説します。
塙 隆茂
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任
集中ケア認定看護師
脳出血とは?
脳出血は脳血管障害の約30%を占める疾患で、原因として最も頻度の高いのは高血圧です。持続性高血圧により、血管壊死と呼ばれる脳内小動脈の中膜筋細胞が壊死することで、出血します(破綻性出血)。高血圧性脳出血は日中活動時に発症しやすくなります。
その他の原因として、外傷性、脳動脈瘤破裂、脳動静脈奇形破裂、もやもや病、出血性梗塞、出血性疾患、脳腫瘍などがあります。
出血部位の大きさによって、さまざまな程度の頭痛、意識障害、脳局所症状がみられます(図1)。
memo:アミロイド血管症
最近では、高齢者に多いアミロイド血管症(アミロイドというタンパク質が血管壁に付着し血管障害が起こる)を背景とした、皮質下出血が増加している。
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患者さんはどんな状態?
一般的な症状は、(1)突然、(2)進行性に、(3)意識障害が生じます。症状完成までは数時間です。
神経脱落症状は脳神経の発症部位により異なります(図2)。
★1 錐体路障害
★2 小脳失調(小脳の障害)
★3 共同偏視
★4 除脳硬直
memo:同名半盲
両眼で同じ側の視野が欠けること。
memo:視床手
視床の障害により生じる指位の異常および不随意運動。
memo:視床痛
視床の障害により生じる強い痛み。
memo:頭位変換眼球反射
頭位を動かすと、眼球が動かした方と反対側へ移動すること。
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どんな検査をして診断する?
頭部CT検査
頭部CT検査は第一選択の検査であり、急性期は境界明瞭な高吸収域となります(図3)。周辺から徐々に吸収が低下し、慢性期には低吸収域となります。
血腫の部位、大きさを診断します。
付随所見として脳浮腫、脳室内出血、水頭症、脳ヘルニアを診断します。
亜急性期に造影剤投与を行うと、血腫周辺の脳組織がリング状に増強されます。
MRI検査
MRI検査は出血の原因(もやもや病、脳動静脈奇形など)が診断可能です(図4)。
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どんな治療を行う?
視床出血
視床の外側に内包があるため、一般的に血腫除去術の適応はありません。
水頭症により脳ヘルニアが切迫する場合、脳室ドレナージ(+内視鏡下で脳内血腫を除去)を行います。
被殻出血
手術の適応となる場合があります(表1)。
小脳出血
CTにて血腫の最大径が3cm以上の場合、手術の適応となることが多いです(表2)。
皮質下出血
手術の適応となる場合があります(表3)。
脳幹出血
脳幹出血の急性期では、手術適応はありません。
脳室内穿破が主体で、脳室拡大の強いものに関しては、脳室ドレナージを考慮します。
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看護師は何に注意する?
脳出血の急性期は早期に血圧の管理が必要となります。収縮期血圧140mmHg未満にし、7日間は維持します。
急性期を含め、継続的に意識神経学的評価(GCS、JCS)、血圧管理、呼吸管理、輸液管理、感染防止に努めます。
リハビリテーション科と共働し、徒手筋力検査(MMT)などを用いて全身の機能評価をしリハビリテーションを行っていきます。
意識障害の評価、筋力の評価などのツールを使用するときは、医療チームの共通理解ができていることが重要です。理解に相違があると麻痺の進行や意識障害の悪化に気づけない場合があります。
後頭蓋窩の出血では、中脳水道が閉塞し水頭症を併発することが多く、注意が必要です。
脳血管疾患では、神経学的評価や血圧管理に注目がいきがちですが、呼吸管理はとても重要です。急性期を脱しても、誤嚥性肺炎などを起こし重症化するケースが多いため注意しましょう。
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脳出血の看護の経過
脳出血の看護を経過ごとにみていきましょう(表4-1、表4-2、表4-3)。
看護の経過の一覧表はこちら。
表4-3脳出血の看護の経過 一般病棟、自宅療養(外来)に向けて
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社