クモ膜下出血

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はクモ膜下出血の検査・治療・看護について解説します。

 

剱持雄二
東海大学医学部付属八王子病院看護部主任
集中ケア認定看護師

 

 

クモ膜下出血とは?

脳は、外側から硬膜クモ膜軟膜の3枚の膜で覆われており、クモ膜と軟膜の間(クモ膜下腔)は、脳脊髄液という液体で満たされています。クモ膜下出血はクモ膜の下に出血をきたす疾患です(図1)。

 

図1クモ膜とクモ膜下出血

図1クモ膜とクモ膜下出血

 

クモ膜下出血の原因で最も多いのは脳動脈瘤(図2)の破裂で、次が脳動静脈奇形(AVM)、ほかにも脳動脈解離(図3)、外傷によるものなどがあります(表1)。

 

図2脳動脈瘤の好発部位

図2脳動脈瘤の好発部位

 

図3脳動脈解離

図3脳動脈解離

 

表1クモ膜下出血の原因疾患

表1クモ膜下出血の原因疾患

★1 脳腫瘍

 

memo:クモ膜下出血のリスク因子

喫煙習慣、高血圧保有、過度の飲酒が挙げられ、これらの危険因子を持ち合わせる人では、その改善を行うよう強く勧められる(グレードA)1)

 

 

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患者さんはどんな状態?

クモ膜下出血の主な症状は激しい頭痛と嘔気です。実際、患者さんは、「突然、バットで頭を殴られたような激しい頭痛」と表現されることがあるように、今までに経験したことのないような強い頭痛におそわれます。また、頭痛と同時に嘔気を起こします。

 

脳出血、脳梗塞とは異なり、手足の麻痺が生じないことが多いです。

 

重度の場合は意識障害を起こします。脳動静脈奇形が破裂して、クモ膜下出血を起こす場合は、脳内出血を合併しており、けいれん発作を起こすことがあります。出血によって手足の麻痺や意識障害などの症状を起こしていることがあります。

 

意識障害を伴っていなくても、目の後ろの動脈に動脈瘤ができると、動眼神経が圧迫されることによって瞳孔不同が生じることがあります。

 

 

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どんな検査をして診断する?

CT検査、MRI検査

クモ膜下出血が疑われる場合、頭部CT検査を行います(図4)。クモ膜下出血が起こっているときにはCT画像上出血している部分が白く写り、鞍上部周囲のクモ膜下腔にヒトデ型ペンタゴンといわれる)の高吸収域を認めます。

 

出血量が少ない場合や、発症から時間が経っている場合は、CTで出血が確認できないケースがあり、その場合はMRI検査(FLAIR画像で高信号域として認める)を行います。

 

図4クモ膜下出血の診断画像

図4クモ膜下出血の診断画像

 

脳脊髄液検査

頭部CT検査で明らかな出血を認めなくても臨床症状からクモ膜下出血が疑われる場合には、腰椎穿刺をし、脳脊髄液の性状を確認する脳脊髄液検査を行う必要があります。脳脊髄液は、発症直後では血性、発症後3~4日経過したものではキサントクロミー様を示します。

 

memo:キサントクロミー

脳脊髄液が黄色っぽい色調となった状態。赤血球中のビリルビンに由来し、古い出血があったことを示す。

 

腰椎穿刺は頭蓋内圧が亢進している患者さんでは禁忌であり、また穿刺の疼痛が再出血の誘因になる可能性があるため、慎重に行う必要があります。

 

 

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どんな治療を行う?

脳動脈瘤が一度破裂すると数日で再破裂することが多いため注意が必要です。再破裂すると重度の後遺症が残る可能性が高く、再出血を予防する手術を緊急に行います(図5)。

 

図5脳動脈瘤の治療法

図5脳動脈瘤の治療法

 

脳動脈瘤クリッピング術図5左下)

脳動脈瘤クリッピング術は、開頭して行う手術で、顕微鏡で目的の脳動脈瘤を露出させ、脳動脈瘤の根元の部分をクリップで遮断します。

 

脳血管内治療(脳動脈瘤塞栓術、図5右下)

脳血管内治療は血管内から脳動脈瘤を閉塞させ、破れないようにする治療です。鼠径部からカテーテルを入れて、脳動脈瘤ができている脳の血管まで進めていき、脳動脈瘤の中にコイルと呼ばれるプラチナ製の細い針金を詰めます。

 

開頭することなく、脳動脈瘤を切らずに治療ができるので、患者さんの負担を少なくできます。

 

 

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看護師は何に注意する?

術後は脳血管攣縮(図6)による脳虚血の予防が重要となります。

 

図6脳血管攣縮

図6脳血管攣縮

 

治療法に、triple H療法(表2)、脳槽・腰椎ドレナージ管理、血腫溶解(表3)があります。

 

表2triple H療法

表2脳血管攣縮のtriple H 療法

 

表3脳血管攣縮のその他の治療法

表3脳血管攣縮のその他の治療法

 

脳血管攣縮が起こった後は、脳虚血により脳梗塞へと移行することがあります。

 

慢性期治療になり、正常圧水頭症を起こすことがあります。その場合、シャント術を行うことがあります。

 

memo:正常圧水頭症

脳脊髄液の交通が不良で通過できなくなったとき、血流内に吸収される脳脊髄液の量と産生される脳脊髄液の量のバランスが崩れたときに起こる。「歩行障害」「認知機能の低下」「失禁」が3大徴候として知られている。

 

 

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クモ膜下出血の看護の経過

クモ膜下出血の看護を経過ごとにみていきましょう(表4-1表4-2表4-3)。

 

看護の経過の一覧表はこちら。

 

表4-1クモ膜下出血の看護の経過 発症から入院・診断

表4-1クモ膜下出血の看護の経過 発症から入院・診断

 

表4-2クモ膜下出血の看護の経過 入院直後、急性期

表4-2クモ膜下出血の看護の経過 入院直後、急性期

 

表4-3クモ膜下出血の看護の経過 一般病棟、自宅療養(外来)に向けて

表4-3クモ膜下出血の看護の経過 一般病棟、自宅療養(外来)に向けて

 

表4クモ膜下出血の看護の経過 一覧

横にスクロールしてご覧ください。

表4クモ膜下出血の看護の経過

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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