感知した像はどのように脳に伝わるの?|視覚
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は視覚の仕組みについて解説します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
感知した像はどのように脳に伝わるの?
網膜の細胞が感知した光のエネルギーは、神経細胞が扱えるように電気エネルギーに変換する必要があります。
エネルギーの変換を行うのは、網膜を構成する細胞の1つである視細胞です。電気エネルギーに変えられた情報は、神経節細胞を通じて視神経へと伝わり、脳の視床にある外側膝状体(しつじょうたい)へと伝達されます。このとき、両眼の視神経の内側半分は途中で交叉(視交叉)します(外側半分は交叉しません)。
これは、脊椎動物に特有の仕組みです。脊椎動物では、運動や感覚に関係する神経系は、身体の右側を左脳が支配し、身体の左側を右脳が支配しています。したがって、右の視野の情報は左脳で、左の視野の情報は右脳で処理されることになります。
水晶体は凸レンズなので、両眼とも、左側から入った光は右側の網膜に、右側から入った光は左側の網膜に映ることになります。これでは、脳に送られる情報が混乱してしまいます。そこで、内側の視野の情報だけを交叉させて情報を整理しているのです。こうした仕組みにより、物を立体的にとらえることが可能になります(図1)。
図1視交叉
MEMO視交叉(しこうさ)
左側から入った光は右側の網膜に、右側から入った光は左側の網膜に映るため、視交叉で交差して反対側の視覚野に伝えられます。
電気信号は外側膝状体から視放線を経て、大脳皮質の視覚野に達します。まず、第1次視覚野で物体の動き、奥行き、色、形などの要素に区分されます。その後、それぞれの要素の分析を担当する視覚野に伝達され、神経細胞によって分析・認知されます。こうして物を見たと感じます(図2)。
図2視覚伝導路の障害
※編集部注※
当記事は、2019年12月3日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版