インフルエンザと免疫
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回はインフルエンザと免疫について解説します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
インフルエンザと免疫
インフルエンザはインフルエンザウイルスによって感染する疾患です。通常、あるウイルスに感染すると、体内にはそのウイルスに対する抗体ができ、同じウイルスでは発症しない仕組みになっています。
しかし、インフルエンザだけは一生のうちに何度もかかることがあります。これはなぜなのでしょう。
理由は、インフルエンザウイルスが絶えず小さな抗原の変化を繰り返しているからです。
インフルエンザウイルスの表面は、Hスパイク(ヘマグルチニン)とNスパイク(ノイラミニターゼ)という2種類の突起で覆われています。
Hスパイクは私たちの細胞の中に入り込む時に、Nスパイクは細胞の中で増えたウイルスを細胞の外に出す時に働きます。この2つのスパイクが、絶えず小さな抗原の変異を起こしているのです。
その変異がごくわずかであったとしても、免疫システムは以前にかかったウイルスだと認識することができません。そのため、免疫システムをするりと抜けて細胞内に入り込み、体内で増殖してしまうのです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版