退院支援が事例でわかる【4】|妻と娘の意見が対立している後藤さんのケース

このイラストのように、患者さんの妻と娘の意見が割れてしまっているとき、あなたならどう支援しますか?

リハビリテーション中の後藤さんと家での介護を断わりたい妻、自宅に帰したいと思う娘の意見が分かれた所を説明するイラスト

この連載では退院支援について、退院調整看護師が経験した事例を基に具体的に解説します(これまでのお話はこちら)。

今回は、妻と娘の意見が対立している後藤さんのケースを紹介します。

【ライター:岩本まこ(看護師)】

 

退院支援が事例でわかる

Vol.4 妻と娘の意見が対立している後藤さんのケース

タイトル:事例でわかる退院支援

後藤寛さん(仮名)は70代の男性。

私が後藤さんに出会ったのは、2回目の脳梗塞発症後、リハビリテーション目的で当院に入院されたときでした。

後藤さんの症状を説明するイラスト。1回目の脳梗塞 麻痺もなく自宅退院、入院による体の低下、高次脳機能障害により性格が強く出ていた、妻の負担軽減のためデイサービス介入。2回目の脳梗塞(今回入院)軽度の麻痺、急性期治療後リハビリ目的に当院入院、自宅退院に向け、リハビリに精を出していた。

後藤さんの初発の脳梗塞は、数年前。

麻痺はなく治療後は自宅退院していました。

 

このときすでにケアマネジャーが介入し、デイサービスの利用を開始していました。

 

当院に入院していらしたのは、急性期の治療が終わったあと。

 

後藤さんは「自宅に帰りたい」という明確な意思をもち、自宅に帰るためにリハビリテーションに励んでいました。

 

 

妻の意見

ところが、私が奥さんと話をしてみると、

「入院前も暴力をふるわれたりしてつらかった。娘が家に帰したいというのもわかるけどもう限界なんです」

と涙ながらに訴えるのです。

 

夫の介護はもう限界だと泣いて訴える妻のイラスト。

後藤さんは入院して1カ月半が経とうとしていました。

 

 

後藤さんの家族

後藤さんの奥さんは70代。

40代の娘さんは結婚しており、後藤さんは奥さんと2人暮らしです。

 

初回の入院後、麻痺はありませんでしたが、体力低下がみられていました。

また、高次脳機能障害により性格が強く出るようになったそうです。

 

奥さんの話によると、暴言を吐いたり、近くに寄ると叩かれたりすることがあったそうです。

介護する妻に「自分勝手にしやがって!」と暴言を吐いたり、叩いている夫のイラスト。

奥さんの趣味はカラオケなのですが、後藤さんがデイサービスに行っているあいだに遊んでる、とそのことが気に入らない様子。

 

「自分勝手にしやがって」とぶたれることがあったそうです。

私が奥さんと話したときは、涙を見せ精神的に不安定な様子がみられました。

 

 

娘の意見

後日、私は娘さんがお見舞いに来ているときに話を聞くことにしました。

 

「最終的には母が決めることですが、体力的には家に帰れそうだし、私も週に2~3回は手伝いに行けます」

と言われました。

後藤さんを自宅にかえすと主張する娘が、「私も週に2~3回は手伝いにいけます」と伝えているイラスト。

娘さんは元医療職。

自分の意見に自信を持ち、貫きたい強固さを感じました。

 

さて、ここで私が気になったことは、親子の意見のすれ違いではなく、“妻と娘がバラバラにお見舞いに来ていること”。

意見の対立している後藤さんの妻と娘がなぜ一緒に病院にこないのか不思議に思う看護師のイラスト。

なぜ2人は一緒に病院に来ないのでしょう…?

その理由は、次回お話しします。

 

(次回へつづく)

 

(編集部注)

本事例を公開するにあたり、プライバシー保護に配慮し、個人が特定されないように記載しています。

 

【文】岩本 まこ

社会人経験を経て看護師になった30代。

総合病院での勤務を経て、現在は市中病院にてより良い退院支援について日々勉強中の退院調整看護師。

【イラスト】いまがわゆい


心がほっこりするイラスト・イラストエッセイ・マンガを描いています。

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