患者によって便器の種類を変えるのはなぜ?|床上排泄
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『看護技術のなぜ?ガイドブック』より転載。
今回は床上排泄で使用する便器に関するQ&Aです。
大川美千代
群馬県立県民健康科学大学看護学部准教授
患者によって便器の種類を変えるのはなぜ?
患者の体型、状態などにより、使いにくい形状の便器があるからです。
例えば、小柄な患者や自力で殿部を持ち上げることが難しい患者の場合は、厚みのある洋式便器より薄い和式便器のほうが腰への負担を軽くすることができます。こうした患者に洋式便器を用いる場合は、タオルで作った腰枕を背中の隙間に挿入し、安定した姿勢がとれるようにします。
るいそうがあって仙骨が突出していたり、褥瘡がある患者では、ゴム製便器をつぶした状態で挿入し、位置が定まったところで空気を入れて膨らませると使いやすくなります。
自分で便器を取り外しができる患者では、和洋折衷(せっちゅう)便器が軽くて使いやすく、便利です。
患者を側臥位にして便器を挿入する
片麻痺患者は腰を上げることができないので、側臥位で排泄の援助を行います。
患側を下にした側臥位にし、可能であれば健側の手でベッド柵につかまって体を支えるように指示します。肛門が便器の中央にくるように便器を当て、そのまま殿部に密着させた状態で膝を回転させて仰臥位にします。排泄中の姿勢が安定するように、患側の足や肩にクッションを当て、下半身を布で覆って退室します。
患者の腰を持ち上げる
ベッド上で患者の腰に便器を差し入れる時、看護師は腰を十分に下げた姿勢を取ることが重要です。片方の手を患者の腰から殿部に入れて持ち上げ、もう片方の手で便器を殿部に挿入します。腰を上げることができる患者の場合は、「腰を上げてください」と協力を求め、殿部の中央に便器がくるように差し込みます。
便器を挿入する際には、尾骨の先端を確認してから挿入すると、適切な位置に挿入しやすくなります。尾骨の先端が便器の受け口に入るようにすると安定感が増し、排泄物が外に漏れる心配もなくなります。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護技術のなぜ?ガイドブック』 (監修)大川美千代/2016年3月刊行/ サイオ出版