せん妄の患者には、まず何をしたらいいの?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「せん妄患者にへの初期対応」に関するQ&Aです。
田中政宏
大阪市立総合医療センター精神神経科副部長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
せん妄の患者には、まず何をしたらいいの?
「せん妄の原因・誘因」および「せん妄を悪化させうる要因」のうち、対応可能なものへの対応を行うことです。薬物治療はその次です。
〈目次〉
薬物治療の前にすべきこと
手術を受ける患者の高齢化が進み、せん妄は頻度の高い術前・術後合併症になっています。このため、すべての病棟および担当スタッフがせん妄への対応についての知識をもつことが望まれます。
せん妄の原因となる因子は多数あります(1)。これらの因子が同時に複数存在することも多く、原因が明確に区別できないことも少なくありません。これらの因子のなかで対応可能な状況については、薬物治療の前にそれを取り除くか軽減することでせん妄の消失または改善が期待できます。
薬物治療はどのように行う?
せん妄への薬物治療(表1)は、前述の対応を行った後、またはそれと並行して検討することになります。
せん妄は通常、「過活動型」「低活動型」「混合型」に分類されます(表2)。
過活動型せん妄には抗精神病薬が使用されることが多く、ハロペリドールは循環動態への影響や抗コリン性の副作用が少なく、かつ注射剤もあるために使いやすく、しばしば使用されます。クエチアピンとリスペリドンについては、その有効性についての無作為化比較試験によるエビデンスも示されています(2)。
低活動型せん妄に対する薬物治療の効果についてのエビデンスは限定的です(2)。実際の薬の選択には、患者の全身状態、合併症、薬物の副作用の可能性、可能な投薬経路、薬剤の相互作用などを考慮して個別的に検討します。なお、薬物を使用する場合には安全確保(転倒防止など)のために夜間の身体拘束を行う必要が出てくることもあります。
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社